開胸開腹食道切除術を受ける患者を対象に、異なる一側肺換気の方法が術後の転機に与える影響について調べた。胸腔鏡下手術を受けた患者を除き、ランダム化によって13人が従来型一側肺換気群に、18人が保護的一側肺換気群に分けられた。従来型一側肺換気では一回換気量 10ml/kgでPEEPは用いず、Paco2 が40mmHg程度となるように換気回数を調節した。保護的一側肺換気では一回換気量 6ml/kg、PEEP 5cmH2O、換気回数 12回/分とし、Paco2 70mmHg まで高二酸化炭素血症を受容した。 対象患者のうち、入院期間中の死亡はなかった。入院期間、集中治療室滞在日数、術後人工呼吸期間、術後に再挿管を要した頻度、術後急性腎障害の頻度について、群間差は認められなかった。腎障害バイオマーカーとして、手術前から手術翌日にかけて経時的に尿中 N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ、血中シスタチン C、血清および尿中 Neutrophil gelatinase-associated lipocalin、尿中肝臓型脂肪酸結合タンパクを測定したが、いずれについても群間に有意差はなかった。一側肺換気中の動脈血液ガスは、保護的一側肺換気群で一側肺換気中の Paco2 が有意に高く、pH が有意に低かった。Pao2 には有意差がなかった。 以上の結果から、開胸開腹食道切除術においては異なる一側肺換気の方法が転帰にもたらす影響は、あったとしても小さいことが示唆された。
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