研究実績の概要 |
今年度はマウスの全脳を使用し、遷延性術後疼痛モデルの急性期、慢性期のマイクロRNAプロファイリングによりバイオマーカーを導き出す試みを行った。イオンプロトンシステムを使用し、動物はC57BL6Jを用いて、ソムノペンチルとセボフルランで麻酔後、足底に皮弁を作成する手術を行った。脳の取り出しにも麻酔を行い、直ちにRNALaterに保存し、全脳を破砕し、攪拌し、一部を用いてマイクロRNAを抽出し、分析した。最終的にはナイーブ6匹、術後2日(急性期)、術後28日(慢性期)について解析を行った。 解析可能な全マイクロRNAのうち発現量が10コピー未満のものを解析対象から除外すると約800種類が同定された。 特に、急性期と慢性期との区別を目指し、術後2日目と術後28日目のデータのみを取り出して解析を行うこととした。JMP11.0を用いた解析でまず、説明変数スクリーニングを行ったところ、寄与率が0より大きいマイクロRNAが39同定された。Ward's Methodを用いたクラスター解析で上位5つのマイクロRNAの発現量データを用いることで、第一分岐で術後2日目と術後28日目のデータを区別することに成功した。具体的な種類はmiR-331-3p,miR-669-3p,miR-701-5p,miR-383-3p,miR-5132-3pであった。 手術前のマウスのデータも一緒にした解析では、説明変数スクリーニングで約80種類の寄与率の高いマイクロRNAが同定されている。今後はこれらのマイクロRNAのターゲット遺伝子を同定し、そのmRNAの発現量を調べることで、術後痛の急性期から慢性期にかけて脳何で何が起こっているか明らかにする試みを続けたい。
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