研究課題/領域番号 |
25462437
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
松本 美志也 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60243664)
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研究分担者 |
水上 洋一 山口大学, 大学研究推進機構, 教授 (80274158)
石田 和慶 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80314813)
若松 弘也 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (80379966)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脊髄虚血 / 脊髄保護 / ischemic preconditioning / neuroglobin |
研究概要 |
2013年度はNeuroglobinの脊髄保護における役割の基礎データとして、脊髄に対する様々なearly ischemic preconditioning(IPC)の方法の脊髄保護効果を比較した。すなわち、短時間の非侵襲的な脊髄虚血、腎臓または大腿の短時間虚血(remote IPC)の脊髄保護効果を家兎一過性脊髄虚血モデルを用いて比較した。 【方法】家兎を4群(各n=6)に分けた。イソフルランとフェンタニルによる全身麻酔下に、左腎動脈直下の腹部大動脈をテーピングした。AO群は大動脈を、RA群は左腎動脈を5分間遮断‐15分間再灌流‐5分間遮断した。TH群は両大腿を10分間駆血‐10分間再灌流‐10分間駆血した。3群とも最終処置から30分後に大動脈を15分間遮断した。対照群は15分間の大動脈遮断のみ行った。閉創後、麻酔から覚醒させて7日間後肢運動機能を5段階で評価した。その後、HE染色により腰部脊髄(L5)腹側の正常神経細胞数を計測した。 【結果】再灌流7日後の後肢運動機能は、AO群(4:5羽、3:1羽)が対照群(2:2羽、0:4羽)に比較し有意に良好であった。一方、RA群(4:1羽、0:5羽)とTH群(4:1羽、3:1羽、0:4羽)は対照群と比較し、有意差はなかった。正常神経細胞数(平均値±標準偏差)はAO群74±9、RA群10±13、TH群25±2、対照群8±7とAO群が他の全ての群に比較し有意に多かった。 【まとめ】大動脈短時間遮断を1度だけ行うIPCの脊髄保護効果は弱いと報告されているが、2回繰り返すことで強い保護効果があることが判明した。一方、remote IPCの保護効果は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ニューログロビンを中心とした虚血応答システム活性化による脊髄保護の研究を行う予定であるが、今まで報告されている虚血耐性誘導の方法がどの程度の保護効果であるかを踏まえた上で、課題研究を行う必要があると考えた。そこで、今まで自ら行ったことがないearly ischemic preconditioningの脊髄保護効果について検討を行ったため、研究全体の進行が計画に比較するとやや遅れている。しかし、2013年度得られた結果は、予想外に興味深い結果であり、今後の研究遂行の上で大きな基礎データとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度のearly ischemic preconditioningに関する研究結果で、短時間の大動脈遮断を2回繰り返すことで、強力な脊髄保護効果があることが判明した。 2014年度の研究では、early ischemic preconditioning、delayed ischemic preconditioningにおけるニューログロビンの役割を解明すると同時に、N-acetyl-cysteine投与によるニューログロビン活性化により脊髄保護効果が得られるか否かを検討する。
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