麻酔したブタ生体を用いて、気管切開を行い人工呼吸器を装着し、胸骨を切開し心臓を露出し、頚動脈ー左前下行枝バイパスを作成した。このバイパス回路を12分間遮断し90分間解除し左前下行枝灌流領域を虚血及び再灌流させることで、心筋虚血再灌流モデル(スタン心筋モデル)を作成した。虚血再灌流部位に一対の超音波クリスタルを植え込み局所心筋短縮率(%SS)測定し、心筋収縮力の指標とした。このモデルを用いて、GLP-1 agonistリラグルチドが心筋虚血再灌流障害からの回復に与える影響について検討した。 1.GLP-1 agonistリラグルチドを臨床投与量である15μg/kgを7日間、1日1回朝食前にブタに皮下注射にて投与した群とリラグルチドの代わりに生理食塩水を投与した群(コントロール群)との比較では、リラグルチドを投与した群で再灌流30分、60分、90分後において心筋スタニングからの心筋収縮力の回復がコントロール群より有意に改善することが証明された。 2.実験前日朝に1回のリラグルチド15μg/kgの皮下注射を行った群とコントロール群との比較を行った。リラグルチドを前日1回投与した群で再灌流30分、60分、90分後において心筋スタニングからの心筋収縮力の回復がコントロール群より有意に改善することが証明された。 GLP-1 agonistリラグルチドの継続的投与や術前日の1回投与は周術期の心筋虚血に対して心筋保護効果を得られる可能性が示唆された。
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