研究課題/領域番号 |
25462442
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
村田 寛明 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (90437856)
|
研究分担者 |
上園 保仁 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (20213340)
須藤 結香 東京理科大学, 薬学部, 助教 (70646695)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | オピオイド / 二量体 |
研究実績の概要 |
オピオイド受容体のうち、μ受容体とδ受容体が二量体を形成した状態で各種薬物を投与した際に、μ-δ受容体ヘテロ二量体がどのような細胞内局在を示すのか、そのことにより鎮痛効果や耐性発現にどのような影響があるのかを明らかにすることを目的とした研究を行っている。本研究には新たにクローニングしたHEK293細胞を用いた。この細胞株は細胞膜上に局在するμ受容体のみを選択的に蛍光標識可能にするアミノ酸配列を有するμ受容体と、それとは別の抗体で標識可能なアミノ酸配列を有するδ受容体を同時に定常的に発現するものである。それぞれの抗体標識オピオイド受容体は細胞内でヘテロ二量体を形成すると考えられる。この細胞株を用いた研究を行う利点は、μ-δ受容体ヘテロ二量体の細胞内局在をリアルタイムに可視化して観察できることである。これにより細胞膜表面から細胞質内へのヘテロ二量体の移動、その後の分解あるいは細胞膜への再分布などの時間経過を観察することができる。この細胞株に対し、DAMGO(μ受容体アゴニスト),SNC80(δ受容体アゴニスト)および臨床使用されているmorphine, fentanyl, remifentanil, oxycodoneなどを投与した。DAMGOおよびSNC80投与時のμ受容体およびδ受容体の細胞内局在変化より、本実験で用いた細胞株の細胞膜上にはμ-δ受容体ヘテロ二量体が確かに存在することを確認した。種々の濃度のmorphine, fentanyl, remifentanil, oxycodone投与に対するμ-δ受容体ヘテロ二量体の細胞内局在の経時的変化についてデータを蓄積しており、薬剤によってμ-δ受容体ヘテロ二量体の細胞内動態が異なることを確認している。μ受容体単独発現またはδ受容体単独発現の場合との比較検討も実施している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vitroでのデータ解析に時間を要している。新たな新たな培養細胞株を樹立し、より信頼のおける実験系を組めるようになっため、これを採用しより信頼のおけるデータの蓄積を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
二種類のオピオイド受容体が単に共存しているだけでなく、二量体を形成していることをより客観的に示す様々な手法が開発されている。オピオイド受容体二量体形成による細胞内局在の変化と単に二種類のオピオイド受容体が共存していることによる細胞内局在の変化をより確実に識別できることが重要である。現在、この点を特に重視してin vitroアッセイ系を改良した上で研究を進めており、それを踏まえてin vitroでのデータをより信頼のおけるものにした状態でin vivoの研究に進む計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
臨床業務が多忙なため、国立がん研究センター研究所への出張が当初想定していた程にはできず、実験の遂行およびデータの解析に遅延を生じている。また、新たな培養細胞株を樹立し、より信頼のおける実験系を組めるようになったため、研究期間を1年間延長し、さらにデータを蓄積することが望ましいと判断した。 このため、特に旅費に充てる費用が当初の想定よりも少なかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
高額を要する実験機器や消耗品は概ね揃っており、補充は最小限で済むと想定される。旅費および学会発表や論文作成に必要な諸費用としての使用を計画している。
|