研究課題/領域番号 |
25462444
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
時永 泰行 札幌医科大学, 医学部, 助教 (60438281)
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研究分担者 |
枝長 充隆 札幌医科大学, 医学部, 講師 (70616169)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 血管内皮 / グリコカリックス |
研究概要 |
血管内皮細胞の内膜面にはグリコカリックスとよばれる糖鎖の層が存在する。グリコカリックスは糖タンパク質、プロテオグリカン、および、グリコサミノグリカンにより構成されている。グリコカリックスの機能は、第1に透過選択性のある防護壁として、第2に酵素、補酵素、液性伝達物質の局所濃度調節領域として、第3にシェアストレスといった物理的刺激のシグナル伝達経路の一部として働いている。グリコカリックスに対する障害は、虚血再還流時、敗血症、hypervolemia によって起き、その障害には活性酸素種の関与が示されている。近年、血管内皮の機能を維持する上でグリコカリックスを治療の対象とし、グリコカリックスをいかに保護するかが論点となっている。麻酔薬のグリコカリックスに対する効果として、虚血によるグリコカリックスの障害をセボフルランが抑制することが示されている。Sialic acid はグリコカリックスの構成要素の一つであり、糖鎖分解酵素のSialidase によってSialic acid を分解することで肺血管内皮細胞による内皮の防護作用を抑制したという報告がある。グリコカリックスに関して、内皮依存性弛緩反応における麻酔薬の効果を明らかにした報告はない。本研究では、麻酔薬がグリコカリックスを保護する効果があるという仮説をたて、グリコカリックス障害時の内皮依存性弛緩反応における麻酔薬の効果を明らかにすることを目的とする。周術期におけるグリコカリックス機能の保護に着目し、麻酔薬によってグリコカリックス障害を保護を期待し、グリコカリックス機能の保護に関して揮発性麻酔薬と静脈麻酔薬の比較を行い、特に敗血症といった活性酸素種による組織障害が予想される状況で、麻酔薬を選択する際の理論的根拠がもたらされる点が本研究における臨床的意義である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
等尺性張力変化の測定:Wistar 雄性ラットより胸部下行大動脈リング状標本を調製し、標本を95%酸素―5%ニ酸化炭素でバブリングしたクレブスリンゲル液中に懸垂し、3×10-7M フェニレフリンを適用し収縮を得た後、10-6M アセチルコリンを適用し、内皮依存性血管弛緩反応を計測した。標本をクレブス液で洗浄し、糖鎖分解酵素(Sialidase、37℃、60 分間)あるいは過酸化水素処理(37℃、8分間)し、洗浄後、再び3×10-7M フェニレフリンを適用し収縮を得た後、10-6M アセチルコリンを適用し、内皮依存性血管弛緩反応を計測した。以上より糖鎖分解酵素処理、過酸化水素処理の前後での内皮依存性血管弛緩反応を比較を行ったところ、過酸化水素処理による内皮依存性弛緩反応の抑制が予想していたものより小さかったため反応条件の検討に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
等尺性張力変化の測定を継続し、麻酔薬としてプロポフォール、セボフルランの3点での濃度で比較を行う。 グリコカリックス障害の組織化学的検討:Wistar 雄性ラットより胸部下行大動脈リング状標本を調製し、標本を95%酸素―5%ニ酸化炭素でバブリングしたクレブスリンゲル液中に懸垂する。糖鎖分解酵素処理あるいは、過酸化水素処理し、切片標本を作製し、組織化学的染色を行い、共焦点顕微鏡によりグリコカリックスの層の厚さを比較する。 グリコカリックス障害の電子顕微鏡像による評価:Wistar 雄性ラットより胸部下行大動脈リング状標本を調製し、標本を95%酸素―5%ニ酸化炭素でバブリングしたクレブスリンゲル液中に懸垂する。糖鎖分解酵素処理、あるいは、過酸化水素処理し、急速凍結により切片標本を作製し、電子顕微鏡によりグリコカリックスの層の厚さを比較する。 グリコカリックス障害のE L I S A による評価:Wistar 雄性ラットより胸部下行大動脈リング状標本を調製し、標本を95%酸素―5%ニ酸化炭素でバブリングしたクレブスリンゲル液中に懸垂する。糖鎖分解酵素処理、あるいは、過酸化水素処理し、処理後のクレブス液を試料として、抗Syndecan-1 モノクローナル抗体を用いてELISA を行い、グリコカリックスの障害の程度を定量する。
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次年度の研究費の使用計画 |
助成金を研究遂行のための物品費として使用したが、助成金の金額と使用額との間で、276円の差額が生じた。本研究において、現時点での276円で新たに購入、使用予定がなかったため差額として計上した。 翌年度分としては請求しない。
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