本研究は、前回の科学研究費補助金で我々が行った、麻酔科医のメンタルヘルスの全国的状況調査およびメンタルヘルスと職場環境改善に関するワークショップを継続するとともに、大学麻酔科医局の産業医的医師を設けることによる効果、および運動の奨励や、強制的休息といった、現場でできるメンタルヘルス対応策の効果を検証することを目的としてデザインした。これにより、前回の科学研究費補助金の成果をさらに発展させ、啓発活動としてのワークショップと、現場でできる具体的手法(産業医的医師、運動、強制的休息)の組み合わせという、包括的な対策を提言することを目的とする。 平成28年度は、麻酔科医60名を対象に、万歩計を2週間装着してもらい、研究機関の前後で日本語版GHQ-30(General Health Questionnaire-30)を行った。万歩計により毎日の運動量と運動時間を測定し、また、毎日の労働時間および就寝、起床時間を自己申告で記録してもらった。また、60名を無作為に30名ずつにわけて、一方の群には日常的に仕事および生活をしてもらい、もう一方の群には、通勤時間や病院内で歩いている時間も含めた一日の運動時間が2時間を超えるように、2週間の初日と1週間目に促すこととした。 結果として、なにも介入しなかった対照群の30名では、GHQ-30は2週間で変化はなかった。毎日の運動時間や睡眠時間とGHQ-30には相関がある傾向がみられたが、有意ではなかった。 運動時間に関する介入をおこなった群30名については、対照群より運動時間が有意に多くなった。しかしGHQ-30のスコアは、対照群と有意差はなかった。 今回の研究では、運動という介入による効果を検証することはできなかった。研究期間が短かったことと、研究対象者数が60名と少なかったことが原因かもしれない。労働時間の短縮化などの効果の検証が今後の課題である。
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