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2013 年度 実施状況報告書

神経障害性疼痛モデルラットにおける下降性抑制系賦活機構の検討

研究課題

研究課題/領域番号 25462448
研究機関大阪市立大学

研究代表者

西川 精宣  大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20145791)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワード下行性抑制系 / in vivo patch clamp / 脊髄 / トラマドール / デクスメデトミジン / 交感神経
研究概要

本研究の目的は、神経障害性疼痛の病態を模したChung のラット脊髄神経結紮モデルを用いて、行動学的実験とともに脊髄in vivo patch clamp 法を用いたシナプス応答を解析し、各種鎮痛薬あるいは交感神経遮断がもたらす効果における下行性抑制系の役割を明らかにすることである。
正常ラットでトラマドール5 mg/kgの静注は逃避閾値を有意に上昇させたが、ナロキソン4 μg/kgで前処置すると変化なかった。トラマドール5mg/kgの静注で興奮性シナプス後電流(EPSC)の曲線下面積(charge transfer)は79%に減少し、抑制性シナプス後電流(IPSC)のcharge transferは0.5 mg/kgから15 mg/kgまで用量依存性に増加した。これらの変化はナロキソン4 μg/kgの前処置で抑制された。脊髄に10 μMのトラマドールを還流させてもEPSC, IPSCは変化なかった。Chungモデルを作成し、選択的定量的侵害刺激を再現するために、定量的侵害機械刺激を加えるピンチメーターと定量的侵害熱刺激を加える痛覚計でラットの足底あるいは下腿を刺激し、トラマドールを脊髄くも膜下に投与して検討した。この脊髄in vivo patch clamp studyでは、覚醒下で求めたピンチ刺激、熱刺激による逃避反応閾値より大きい一定の閾上刺激を与えて誘発EPSC、誘発IPSCの変化とトラマドールの影響を検討した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初、選択的なC線維、Aδ線維、Aβ線維刺激を達成するために、Neurometer NS3000を用いる予定であったが、業者取り扱いが中止され入手困難となった。当初の目的を達成するために必要な選択的定量的侵害刺激を再現するための代替装置の探索と特注が必要となり、機器の調達に日時を要し、本来の研究計画に基いた実験の開始が遅れるので、その間は従来のDynamic plantar aesthesiometerを用いた機械刺激での逃避行動閾値のみでの判断となるが、鎮痛薬の作用を検討する予備実験から始めた。まず脊髄in vivo patch clamp法による検討をトラマドールについて行うこととした。年度途中で鋭利な機械刺激による疼痛刺激を再現するピンチメーターと一定の温度上昇速度と設定温度のプラトー時間を設定できる痛覚計(熱刺激)を代替装置として使用する事で本来の目的に準ずる修正研究計画で進行しているが、トラマドールについては現在までに実施できている。下行性のセロトニンニューロン破壊群、ノルアドレナリンニューロン破壊群の検討は行えていないが、従来の痛みに関する脊髄in vivo patch clamp研究は刺激の特異性、定量性に欠け、得られた結果の解釈が非常に困難であったので、刺激条件を揃えてデータの統一性を確保することがこの研究で最も重要な点であり、遅れを生じたものの、研究内容に大幅な変更は生じていない。

今後の研究の推進方策

ピンチメーターと痛覚計を活用する事で定量性のある侵害刺激を再現できるので、今後は研究のスピードアップが期待できると考えている。鎮痛薬の作用検討が一部先行したので、下行性抑制系ニューロン破壊の影響についても検討を加えるが、重要性が高いと思われるノルアドレナリンニューロン破壊群についての検討を優先し、他の鎮痛薬については、既に正常ラットで知見が得られているα2アゴニストの一つデクスメデトミジンを優先させる。最終年度は腰部交感神経節切除処置の影響についても検討する必要があるので、研究期間内に一定の知見が得られるようにすすめてゆくために、群分けを少し簡略化する。

次年度の研究費の使用計画

年度末に購入を意図していた消耗品の単価が残額を上回ったため購入できなかった。
CG-1.5 500本入り電極用ガラス管 外径1.5 mm 長さ 90 mm \29,000 の一部に充当する

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Systemic dexmedetomidine augments inhibitory synaptic transmission in the superficial dorsal horn through activation of descending noradrenergic control: An in vivo patch-clamp analysis of analgesic mechanisms2014

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Funai, Anthony Edward Pickering, Daisuke Uta, Kiyonobu Nishikawa, Takashi Mori, Akira Asada, Keiji Imoto, Hidemasa Furue
    • 雑誌名

      Pain

      巻: 155 ページ: 617-628

    • DOI

      10.1016/j.pain.2013.12.018

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The effect of lipid emulsion on intracellular bupivacaine as a mechanism of lipid resuscitation: An electrophysiological study using voltage-gated proton channels2013

    • 著者名/発表者名
      Kotaro Hori, Tadashi Matsuura, Takashi Mori, Miyuki Kuno, Makoto Sawada, Kiyonobu Nishikawa
    • 雑誌名

      Anesthesia and Analgesia

      巻: 117 ページ: 1293-1301

    • DOI

      10.1213/ANE.000000000000011

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Systemic α2 agonist administration facilitates inhibitory synaptic transmission in the rat spinal dorsal horn mediated through α1 adrenoceptors2013

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Funai, Kiyonobu Nishikawa, Takashi Mori, Akira Asada, Keiji Imoto, Hidemasa Furue
    • 雑誌名

      Pain Research

      巻: 28 ページ: 145-153

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Relationship between noradrenaline release in the locus coeruleus and antiallodynic efficacy of analgesics in rat with painful diabetic neuropathy2013

    • 著者名/発表者名
      Koichi Suehiro, Tomoharu Funao, Yohei Fujimoto, Tokuhiro Yamada, Takashi Mori, Kiyonobu Nishikawa
    • 雑誌名

      Life Sciences

      巻: 92 ページ: 1138-1144

    • DOI

      10.1016/j.lfs.2013.04.015

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 肩関節手術後鎮痛 ー麻酔科からの視点ー2013

    • 著者名/発表者名
      西川精宣
    • 雑誌名

      整形・災害外科

      巻: 56 ページ: 1561-1565

  • [学会発表] Brain serotonin content regulates manifestation of tramadol-induced seizure in rats2013

    • 著者名/発表者名
      Yohei Fujimoto, Tomoharu Funao, Koichi Suehiro, Ryota Takahasi, Katsuaki Tanaka, Kiyonobu Nishikawa
    • 学会等名
      2013 Annual Meeting, American Society of Anesthesiologists
    • 発表場所
      Moscone Convention Center, San Francisco, California, USA
    • 年月日
      20131015-20131015
  • [学会発表] The recovery speed of lipid emulsion therapy largely depends on "lipid sink": An electrophysiological study using voltage-gated proton channels2013

    • 著者名/発表者名
      Kotaro Hori, Tadashi Matsuura, Megumi Hasaka, Takashi Mori, Miyuki Kuno, Kiyonobu Nishikawa
    • 学会等名
      Euroanesthesia 2013
    • 発表場所
      Centre de Convencions Internacional de Barcelona, Barcelona, Spain
    • 年月日
      20130603-20130603
  • [学会発表] Antinociceptive actions of tramadol revealed by in vivo patch-clamp recordings in the spinal dorsal horn2013

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Yamasaki, Takashi Mori, Yusuke Funai, Taku Hamada, Tokuhiro Yamada, Kiyonobu Nishikawa
    • 学会等名
      Euroanesthesia 2013
    • 発表場所
      Centre de Convencions Internacional de Barcelona, Barcelona, Spain
    • 年月日
      20130602-20130602
  • [学会発表] ジアゼパムはリドカイン・トラマドール誘発性痙攣をともに抑制する2013

    • 著者名/発表者名
      藤本陽平、舟尾友晴、末廣浩一、高橋陵太、西川精宣
    • 学会等名
      日本麻酔科学会第60回学術集会
    • 発表場所
      ロイトン札幌、札幌
    • 年月日
      20130524-20130524
  • [学会発表] 脊髄後角in vivoパッチクランプ法によるトラマドールの鎮痛機序の検討2013

    • 著者名/発表者名
      山崎広之、森 隆、舟井優介、濱田 拓、山田徳洪、西川精宣
    • 学会等名
      日本麻酔科学会第60回学術集会
    • 発表場所
      ロイトン札幌、札幌
    • 年月日
      20130524-20130524
  • [学会発表] Lipid rescueにおける”lipid sink"の効果発現時間についてー電位依存性プロトンチャンネルによる検討2013

    • 著者名/発表者名
      堀耕太郎、松浦 正、羽阪めぐみ、森 隆、久野みゆき、西川精宣
    • 学会等名
      日本麻酔科学会第60回学術集会
    • 発表場所
      ロイトン札幌、 札幌
    • 年月日
      20130523-20130523
  • [図書] 麻酔科医のための周術期の疼痛管理;新戦略に基づく麻酔・周術期医学 6章 周術期疼痛の治療法 6-3 術後痛に有効なその他の薬物2014

    • 著者名/発表者名
      西川精宣 専門編集:川真田樹人、監修:森田 潔
    • 総ページ数
      320 (195-202)
    • 出版者
      中山書店

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公開日: 2015-05-28  

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