研究課題
出血性ショックでは蘇生に成功しても全身性炎症反応の亢進の結果、肺に好中球が浸潤・集積する。肺で活性化された好中球から発生する活性酸素による酸化ストレスは肺胞上皮細胞を傷害し、その結果急性肺傷害(Acute Lung Injury:ALI)が発症する。申請者らは、ラット出血性ショック蘇生誘発ALIモデルを作成し、このモデルにストレス蛋白Heme Oxygenase-1(HO-1)の酵素反応産物の一つであるビリベルジンを投与したところ、ビリベルジン/ビリルビン酸化還元サイクルを介して酸化ストレスを抑制することによりALIを改善することを明らかにした。しかし、ビリベルジン単独ではALIの肺胞上皮細胞傷害を完全に抑えることはできなかった。HO-1のもう一つの代謝産物であるCOはCOヘモグロビンを形成し酸素運搬を阻害することにより致死効果をもたらす有毒ガスである。しかし、COは極低濃度では抗炎症・抗アポトーシス作用を示すことが報告されている。最近、体内に投与すると極微量のCOを遊離するCO-releasing molecule(CORM)が開発された。そこで、申請者らはCORMをラットに投与しその体内動態を調べた。その結果、CORMの投与は動脈血中COヘモグロビンレベルを有害なレベルまで上昇させることなく、肺組織のCO濃度を有意に上昇させることを見出した。今後、CORMをALIモデルに投与して治療効果があるかを検討していく予定である。
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10.1016/j.ab.2015.08.004.
安定同位体と生体ガス
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