難治性の神経障害性疼痛は未だ十分な治療法がなく、有効な鎮痛薬の開発が切望されている。神経障害性疼痛の治療が困難な理由の1 つに神経障害性疼痛の発症および維持における分子基盤の多様性がある。この点において、microRNAは特定の数多くの遺伝子のタンパクへの翻訳を阻害することにより発現の調節に深く関与していることから、その発現異常は神経障害性疼痛の一因を担っていると考えられる。特にmiR-17-92 クラスターは同一遺伝子上に複数のmicroRNA を含有していることから、その機能は非常に多岐に渡っている。また、神経障害に伴って後根神経節において顕著に発現変化することから、神経障害性疼痛において重要な役割を担っていると考えられる。従って、本研究ではmiR-17-92 クラスターの多角的な解析を通して神経障害性疼痛に最適化した治療標的を同定することを目標とする。 本年度はmiR-17-92 クラスターの神経障害性疼痛発症から維持期にかけての経時的な発現変化を定量的PCR法により解析し、クラスターの各microRNAが発症初期から持続的に発現が上昇していることを明らかにした。また、in situ hybridization法により、後根神経節における発現分布の解析を行った。さらに、miR-17-92を強制発現するアデノ随伴ウイルスを作製し、実際に各microRNAの発現を誘導できることを確認した。正常動物の後根神経節に投与し、疼痛行動への影響をあきらかにした。
|