研究課題
これまでの先行研究から尿中ラミニンγ2単鎖は膀胱がんの診断指標になりうることを見出している。そこで本研究では、血清中のラミニンγ2単鎖(γ2単鎖)が尿中γ2単鎖と同様に膀胱がん診断の指標となる可能性について膀胱がん患者尿を用いた解析で検討を行った。膀胱がん血清は高知大学医学部ならびに神奈川県立がんセンターの倫理委員会での承認後、高知大学附属病院泌尿器科で採取した。膀胱がん血清のステージ別内訳は、73症例の筋層非浸潤性膀胱癌(Pt<1:早期がん相当)と10症例の筋層浸潤性膀胱癌(pT>2:浸潤がん)であった。これら血清中のγ2単鎖はELISAベースの全自動発光免疫測定法を用いて解析し、その診断精度を健常人とROC解析で比較した。その結果、膀胱がん患者全体では感度、特異性がそれぞれ32.1、89.7となり、AUC値は0.63であった。このため、膀胱患者をステージ別に2群に(pT<1、pT>2)分けて再びROC解析を行ったところ、血清γ2単鎖はpT>2の患者に対して感度、特異度60、98.5、AUCは0.81を示した。以上から、血清γ2単鎖は浸潤がんの診断や治療の際のモニターリングマーカーとしての有用性が見出された。しかし、残念ながら、早期がん相当のpT<1の膀胱がん患者に対しては感度、特異度が30.4、86.8、また、AUCが0.59となり、診断のバイオマーカーに使える可能性が見出されなかった。
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