研究課題/領域番号 |
25462474
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
大山 伸幸 福井大学, 医学部附属病院, 講師 (20223977)
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研究分担者 |
伊藤 秀明 福井大学, 医学部, 助教 (00345620)
森 哲也 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 助教 (40397287)
岡沢 秀彦 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50360813)
横山 修 福井大学, 医学部, 教授 (90242552)
土山 克樹 福井大学, 医学部附属病院, 助教 (90464073)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腎癌 / 分子標的薬 / 早期治療効果 / PET / FLT |
研究概要 |
進行性腎癌に対する分子標的薬の早期効果判定は困難である。しかし、治療中のQOLを向上させ、同時に治療成績を向上させるためには、分子標的薬不応症例を治療開始後のなるべく早い段階で見極めることが重要である。腎癌に対する分子標的薬の早期治療効果の評価にFLT PETが有用かを検討するために本研究を開始した。本研究の目的は、①FLT PETの腫瘍集積と分子標的薬の治療効果発現の間に関連があるか、②FLT PETによる分子標的薬の早期治療効果評価はFDG PETよりすぐれているか、について検討することにある。 対象患者は転移病巣を有する進行性腎癌5症例で、CTで転移を有する進行性腎癌と診断されていること、スニチニブによる治療が予定されていること、治療効果判定が可能であることをエントリー条件とした。症例にはスニチニブ投与前、および投与後2-4週間目にFLTおよびFDG PETを施行した。 PET撮影はADVANCE(GE社製)を用いた。15 mCiのFLTを患者に静脈内投与し、20分後よりスタティックエミッションスキャンで全身をスキャン行った。翌日、4時間の絶食後に、15 mCiのFDGを患者に静脈内投与し、1時間後より全身スキャンを行った。 PET画像はトレーサーが高集積を示す部位では、SUVを用いて定量解析を行った。それぞれのPET診断において、トレーサー集積の陽性、陰性を決定し、陽性部位の数と位置を記録する。データ解析は病変部におけるFLTおよびFDG集積の解析はSUVの平均値と標準偏差をもって比較した。 平成25年度は2名の症例を登録し、研究プロトコールにしたがったPET撮像およびスニチニブによる治療効果の判定が可能であった。2症例とも多発リンパ節転移および肺転移を有していた。スニチニブ1コースの開始して、2-4週目にPET画像を撮像した。いずれの症例のいても、FLTおよびFDGともにトレーサーの集積は低下しており、SUVによる定量解析が可能であった。症例数が少ないため、統計学的解析は未施行である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における研究目的として①FLT PETの腫瘍集積と分子標的薬の治療効果の発現の間に関連があるか、②FLT PETによる分子標的薬の早期治療効果評価はFDG PETより優れているか、と設定した。下記の具体的な目標にしたがって研究を実施し、成果を得た。 平成25年度における研究計画として以下のような目標を設定した。対象患者は転移病巣を有する進行性腎癌30症例(3年間の目標人数)に対して、VEGFR-TKI投与前、および投与後2週間目にFLTおよびFDG PETを施行することとし、患者の条件としてはCTで転移を有する進行性腎癌と診断されていること、VEGFR-TKIによる治療が予定されていること、RECISTを始めとした治療効果判定が可能であることとした。本年度は患者数2名と少なかったものの、対象患者の条件はすべてクリアしており、予定通りの症例をエントリーすることができた。PET撮影に関しては予定通り当施設内にあるADVANCE(GE社製)を用いて撮像することができた。また、FLTとFDGの、2種類の放射性薬剤に関しても高エネルギー医学研究センター内での合成、供給が可能であり、2日間にわたりFDG PETとFLT PETが撮像できた。画像解析は計画通り研究代表者と研究分担者の2名により読影し、トレーサーが高集積を示す部位では、SUVを用いて定量解析を行った。それぞれのPET診断において、トレーサー集積の陽性、陰性を決定し、陽性部位の数と位置を記録した。 本研究の最終研究目的である①FLT PETの腫瘍集積と分子標的薬の治療効果の発現の間に関連があるか、②FLT PETによる分子標的薬の早期治療効果評価はFDG PETより優れているか、に対する答えは、3年間の研究期間を経て結論が得られるが、本研究が予定通り開始され、計画通りの実施手順によって症例解析が開始されたことは、研究開始1年目として十分な目標到達であったと評価する。エントリー症例数は、今後2年間で十分に到達可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始1年として進捗状況としては、ほぼ予定通りの計画が達成されている。今後も、本研究における研究目的として掲げた①FLT PETの腫瘍集積と分子標的薬の治療効果の発現の間に関連があるか、②FLT PETによる分子標的薬の早期治療効果評価はFDG PETより優れているか、の各項目について達成するために、以下の通り研究を推進していく予定である。 平成26年度はより多くの対象患者をエントリーする予定である。当施設附属病院において症例エントリー条件に該当する、転移病巣を有する進行性腎癌で、VEGFR-TKIの投与が予定されている症例についての情報を収集し、該当症例には研究参加への同意が得られるよう、各症例の主治医の協力を得ながら丁寧に研究について説明していく予定である。PET撮影に関しては平成25年度は予定通り当施設内にあるADVANCE(GE社製)を用いたFDG PETおよびFLT PETの撮像が可能であった。平成26年度も同様にトレーサーの合成およびPET撮像を実施する予定である。 画像解析についても平成25年度は予定通り研究代表者と研究分担者の2名により読影し、トレーサーが高集積を示す部位では、SUVを用いた定量解析が実施できた。平成26年度も同様に2名の研究者による読影により解析を行う予定である。 本研究の最終研究目的である①FLT PETの腫瘍集積と分子標的薬の治療効果の発現の間に関連があるか、②FLT PETによる分子標的薬の早期治療効果評価はFDG PETより優れているか、に対する答えは、3年間の研究期間を経て結論が得られる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度はFLT合成が極めて順調であった。そのため、FLT合成に必要な薬剤を購入する費用が予定より少なく、また症例数が少なくFLT合成量も少なかったこともあり、かかる費用を少なくすることができたため、次年度に繰り越して使用する。 平成26年度の研究実施計画に基づいて、研究の実施に必要な①トレーサーの合成に必要な試薬、プラスチック製品、②ターゲット用安定同位体、③トレーサー投与に要する医療用プラスチック製品の購入に使用する。また、研究の遂行に必要な情報収集のために、日本泌尿器科学会、日本核医学会、米国泌尿器科学会の各学術総会に出席するための旅費に使用する予定である。
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