研究概要 |
【目的】今回我々は実臨床でも使用され安全性高いAMPK阻害作用のあるmetforminを使用してその腎細胞がんでの腫瘍抑制効果について検討し、mTOR阻害剤であるエベロリムスとの併用によるAMPK-mTOR経路の抑制メカニズム、癌幹細胞抑制メカニズムの解明を試みた。 【方法】前立腺癌(PC3, LNCaP)、腎癌(786-O, 769-P, ACHN, Caki-1, Caki-2)、膀胱癌(T24, KK47, TCC-SUP, 5637, UMUC3, SW780)の細胞株を用い、細胞増殖抑制効果の確認実験を行った。各細胞株にメトホルミンとエベロリムスを段階的に濃度調整して添加し、WST-1アッセイを行った。また、対照実験としてAMPK活性化薬AICARとAMPK阻害薬compound Cを添加し、細胞増殖能を測定した。 【結果】いずれの試薬も濃度依存性に細胞増殖抑制効果を示した。また、いずれの癌種においてもAMPK活性化、阻害両方で細胞増殖が抑制された。しかしながら、メトホルミンとエベロリムスの併用にて細胞増殖抑制の相加、相乗効果は認められなかった。 【考察と今後の展望】細胞生存にとってAMPKの活性化と抑制はどちらも過剰にならないよう厳密にコントロールされていることが示唆され、mTOR阻害剤の単純な併用はうまくその機能を制御できない可能性が考えられる。今後機能解析を行うとともに、腎細胞がんで広く使用されているチロシンキナーゼ阻害剤を併用してmTOR経路以外の細胞増殖シグナルを抑制することにより相乗効果が得られるか検討する予定である。
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