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2013 年度 実施状況報告書

腎・尿路性器癌の進展におけるストレス応答機構を標的とした治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 25462483
研究種目

基盤研究(C)

研究機関九州大学

研究代表者

内藤 誠二  九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40164107)

研究分担者 塩田 真己  九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20635445)
武内 在雄  九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30586756)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード癌 / シグナル伝達 / 発現制御
研究概要

前立腺癌細胞において、アンドロゲン除去や新規抗アンドロゲン剤であるエンザルタミドにて処理したところ、リン酸化によるYB-1の活性化とアンドロゲン受容体(androgen receptor, AR)の転写誘導とともに、YB-1のリン酸化酵素であるRSK1のリン酸化が誘導されることが分かった。そこで、YB-1特異的siRNAを用いて、YB-1をノックダウンしたところ、アンドロゲン除去やエンザルタミドによるAR転写誘導が抑制された。また、
RSK阻害剤であるSL0101を用いたところ、アンドロゲン除去やエンザルタミドによるYB-1のリン酸化誘導の抑制とともに、ARの転写誘導も抑制された。また、エンザルタミド耐性細胞においては、RSK1とYB-1のリン酸化が亢進しており、これらのリン酸化による活性化が、エンザルタミド耐性に関与していることが示唆された。また、SL0101は、各種前立腺癌細胞において、細胞増殖を抑制することが分かった。さらに、エンザルタミドと併用することで、相乗的な抗腫瘍効果を示し、RSK阻害剤とホルモン療法の併用は有望な新規治療法となる可能性が示唆された。
また、去勢抵抗性前立腺癌に広く用いられているタキサン系抗癌剤に対する耐性機序について検討を行った。その結果、タキサン耐性前立腺癌細胞においては、ERKやRSKが活性化されており、これらのリン酸化酵素の基質であるYB-1のリン酸化の亢進を認めた。そこで、RSK特異的siRNAを用いてRSKをノックダウンしたところ、前立腺癌の細胞増殖が抑制され、タキサンに対する感受性が増強されることが分かった。また、RSK阻害剤であるSL0101を用いて、RSKの活性を阻害すると、前立腺癌の細胞増殖を抑制すると同時に、タキサンと併用することで、相乗的な抗腫瘍効果を示すことが分かった。これらのことから、RSK阻害剤とタキサン系抗癌剤の併用は、有望な新規治療法となる可能性が示唆された。
以上より、YB-1を標的とした治療法開発が有望であるとの実証が得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

腎・尿路性器癌に対しては、免疫療法・分子標的薬(腎癌)、抗癌化学療法(尿路上皮癌・精巣癌・前立腺癌)や内分泌療法(前立腺癌)など様々なsystemic therapyが行われるが、多くの進行性腎・尿路性器癌は、それら治療に対する抵抗性を獲得し予後不良となる。これら治療は、癌細胞に対し治療関連ストレスを生じ、癌細胞はストレス応答を通じて治療環境に適応し、治療抵抗性を獲得する。そこで、これら治療に対するストレス応答メカニズムの解明と、各種治療によるストレス応答機構を標的とした治療法の開発が必要である。我々は、腎・尿路性器癌の各治療抵抗性に様々なシグナル経路が関与しているものの、YB-1分子が共通するストレス応答反応の主要制御因子であることを明らかにした。そこで、このストレス応答反応の主要制御因子YB-1を標的とする新規治療法の開発を目指して本研究を開始した。
平成25年度において、当初予定していたように、小分子化合物を用いたYB-1の活性阻害により、前立腺癌のin vitroの実験系において、ホルモン療法や抗癌剤治療の治療効果を効果的に増強できることを明らかにすることができた。しかし、RSK阻害剤が非常に高価なため、in vivoの実験系での検討は今後の課題であるが、YB-1を標的とした治療の有用性を実証することができており、本研究はおおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

今後の研究予定としては、前立腺癌におけるYB-1を標的とした治療が有効である分子学的機序について、さらなる検討を行うことを予定している。また、前立腺癌で得られた知見に基づき、腎癌や尿路上皮癌、精巣癌などほかの腎・尿路性器癌においても、同様な検討を行っていく。
また、YB-1を標的とした治療法の実現のために、YB-1阻害作用を有する化合物に加え、いくつかのストラテジーにより、新規治療法のシーズ開発を目指す。
<YB-1阻害剤>我々の作成したYB-1ルシフェラーゼレポータープラスミド(細胞内でのYB-1の転写活性を簡単に定量化できる)を用いて、ハイスループットスクリーニング系を構築し、YB-1阻害作用のある化合物のスクリーニングを行い、有望なYB-1阻害剤の探索を行う。
<抗体療法>抗YB-1抗体を用いた新規治療法の開発を行う。我々は、in vitroにて一部の抗YB-1モノクローナル抗体が癌細胞の増殖効果を示すことを認めた。そこで、抗YB-1抗体を用いた抗体療法の可能性を検討する。
<アンチセンス法>アンチセンスオリゴ法を用いた製剤が、海外でいくつか治験中である。このように、製剤開発は比較的容易であり、臨床応用に関しても超えなければならないハードルは比較的高くない。我々は、YB-1に対するアンチセンスオリゴを用いた新規治療法の開発を行う。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Y-box binding protein-1 promotes castration-resistant prostate cancer growth via androgen receptor expression2013

    • 著者名/発表者名
      Shiota M, Takeuchi A, Song YH, Yokomizo A, Kashiwagi E, Uchiumi T, Kuroiwa K, Tatsugami K, Fujimoto N, Oda Y, Naito S
    • 学会等名
      AUA 2013 Annual Meeting
    • 発表場所
      San Diego, USA
    • 年月日
      20130505-20130505

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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