現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
米国での大規模疫学調査から、アスピリンを含むNSAIDsが前立腺がんのみならず、大腸がんや肺がんを予防する効果のあることが明らかとなった(Harris R, Inflammopharmacology 2009)。また、NSAIDs内服者は前立腺全摘後のPSA再発率を低下させることも報告されている(Smith MR, et al, J Clin Oncol 2006)。我々は、LNCaP細胞と22Rv1細胞において、アスピリンはARの発現低下を生じることを見出し、prostaglandinとその受容体への影響を検討したところ、アスピリンでは、Prostaglandin 受容体EP3とEP2を介したARの発現低下がその機序であることを新たに見出し発表した(Endocr Relat Cancer. 2013 May 30;20(3):431-41,Prostate Cancer Prostatic Dis. 2014 Mar;17(1):10-7. )。 また、大豆に豊富に含まれるイソフラボンは、前立腺がんの予防に効果があると期待されている(Zhou JR, J. Nutr. 1999)。その中でもゲニステインやダイゼインは、代表的なイソフラボンであり、ダイゼインは摂取された後に腸内細菌叢によってエクオールに代謝される。我々は、これら3つの代表的なイソフラボン類の中で、前立腺癌細胞LNCaPにおけるARの発現低下にエクオールが最も強いAR抑制活性をもつことを今回明らかにしている。その機序として、ARの転写抑制よりもAR蛋白分解の促進であるという結果を得ている。さらにエクオールは、LNCaP細胞において、dehydrotestosteroneの存在なし/ありの両方の状況でも増殖抑制効果を示し、その抑制効果は細胞のapoptosisが原因であることを明らかにした。 リコペンはカルテノイドの一つであり、米国の大規模疫学調査でその化学予防の効果が報告され、リコペンの血中濃度の高い群では有意に前立腺がんの罹患が低かった(Giovannucci E et al. Int. J. Cancer 2007)。我々は、リコペンもARの発現低下を生じるというpreliminaryな結果を得ており、その機序解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
イソフラボン研究では、、エクオールがARの転写抑制よりも蛋白分解亢進によってAR低下を来たすという結果を得ているため、ARのユビキチン-プロテアソーム系関連の分子の解析を進める。また、ARの蛋白分解系として最近報告されたskp2との分子調節についても解析を進める。我々はすでに、スタチンが、ARの蛋白分解亢進により、アンドロゲン感受性を低下させることにより、前立腺がん発症に寄与している可能性があることを報告した( Yokomizo A, et al. Prostate 71:298-304, 2011)。ARはubiquitin-proteasome pathwayを介して分解されることが示されており(Tang YQ., Asian J Androl 2009;)、スタチンとこれらの分子の発現調節についても今後解析を進める。 さらに、我々は、リコペンもARの発現低下を生じるというpreliminaryな結果を得ており、その機序解析を進めるとともに、赤ワインに含まれるレスベラトロールについても同様の解析を行う予定である。。
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