研究課題
平成27年度には以下の研究を行いました。1) 昨年度に作成したshRNA発現ベクター(HIF 1α & 2α, AKT 1 ~ 3およびScrumble配列)を腎細胞癌株RCC4 (von Hippel-Lindau腫瘍抑制遺伝子欠損株;正常酸素濃度化でも低酸素で発現誘導のかかる遺伝子群の発現が亢進している)にトランスフェクションし、Puromycinを用いて導入された細胞のみを選出して安定的な発現抑制株を樹立しました。現在はこれらの細胞株におけるHIF 1α & 2α及びAKT 1 ~ 3の発現をそれぞれの分子に対する特異的モノクローナル抗体を用いてWestern Blottingにより測定し、HIFとAKTのサブタイプに特異的な相関関係が存在するかどうかを検証しております。2) 横浜市立大学泌尿器科で手術時に採取した腎細胞癌の凍結検体70組(腫瘍部分と周囲正常腎実質部分)から組織抽出液を作成し、Hypoxia-Inducible Factor (HIF) 1α & 2α、AKT 1 ~ 3, リン酸化AKTの発現量をそれぞれの分子に対する特異的なモノクローナル抗体を用いたWestern Blottingにより測定しました。正常部分における発現量を基準として腫瘍部分での発現量がどの程度増減しているのかを算出し、病理データとして得られている組織型・悪性度との相関を検討しました。3) 現在は上記の凍結検体からRNAを抽出してcDNAを合成し、これを用いてReal time PCRを行い、shRNA発現ベクターによるそれぞれの分子の抑制が他の分子の発現量に与える影響がmRNAレベルで生じているのかを確認する作業を行っています。
2: おおむね順調に進展している
1) Double knockdownのための異なる薬剤選択性を持つshRNA vectorの作成も順調に進んでおり、近日中に安定抑制株を作成できる見込みがたっております。
1) 細胞レベルで確認されたAKTサブタイプとHIFαサブタイプの相互作用を臨床検体を用いたWestern Blottingの結果と照合し、論文化します。2) これらの相互作用が相克を起こすのか、それとも相加的・相乗的に作用しうるのかの解析をshRNA発現ベクターによるDouble knockdownにより解析します。3) 低酸素状態においてHIF-AKTが腎細胞癌の薬剤抵抗性に与える影響の解析範囲を免疫チェックポイント阻害剤にまで広げていきます。具体的にはHIFの下流にある免疫関連遺伝子の発現について腎細胞癌凍結標本から抽出したRNAを用いてReal-Time PCR法により測定します。
マウスへの腫瘍移植で腫瘍の造成が遅く、予定されていた実験の一部が今年度に継続となったため
SCIDマウスの購入費に充てるための予算の一部を次年度にまわしました。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
BMC Cancer
巻: 16 ページ: 128
10.1186/s12885-016-2176-6
巻: 16 ページ: 109
doi: 10.1186/s12885-016-2160-1
巻: 16 ページ: 67
10.1186/s12885-016-2097-4