研究課題
本研究は、carbonic anhydrase 2 (CA2)の膀胱癌の予後予測因子としての有用性を明らかにするとともに、CA2 inhibitorの膀胱癌に対する浸潤抑制効果を検討することを目的とする。さらに、CA2 siRNAを用いて CA2の膀胱癌浸潤における役割を明らかにし、CA2をターゲットとした治療への応用を検討する。本年度では、ヒト膀胱癌組織におけるCA2の発現と臨床病理学的因子及び予後との相関を検討するために、膀胱癌症例236例について免疫組織化学染色を行った。その結果、ヒト膀胱癌におけるCA2の発現頻度は深達度が進むにつれて上昇していた。さらに、経尿道的膀胱腫瘍切除術後follow upすることができたpTaおよびpT1症例について予後解析を行った結果、CA2陰性膀胱癌に比較して、CA2陽性膀胱癌のupstagingの頻度は、有意に高いことが示された。以上より、CA2は膀胱癌の新規浸潤関連因子である可能性が示唆された。in vitroおいてCA2 inhibitorの膀胱癌細胞に対する浸潤抑制効果を検討した結果、3種のCA2 inhibitor (Acetazolamide、Brinzolamide、Dorzolamide)のうち、Acetazolamideが最も膀胱癌浸潤抑制効果が強かったことが判明した。さらに、通常培養条件下ではCA2をknockdownしたヒト膀胱癌細胞UMUC3の遊走能は negative controlと比較して有意に抑制され、浸潤能には抑制傾向が見られた。現在低酸素条件下でのCA2 siRNAの浸潤抑制効果を検討中である。
2: おおむね順調に進展している
現在まで、研究が順調に計画通り進捗しており、本年度の目標がすべて達成できた。本年度の研究結果により、CA2が浸潤性膀胱癌の有用な予後予測因子であることが明らかになった。また、CA2 siRNAによる膀胱癌細胞の遊走・浸潤抑制効果が確認できたことで、今後、siRNA法を用いた CA2の機能解析を進めることが可能となる。さらに、in vitroの実験結果に基づいて、来年度に行う予定の動物実験ためのCA2 inhibitorを選定した。
計画通りに、以下の実験を行う予定である。1) 膀胱癌の浸潤過程におけるCA2の役割の解明CA2 siRNAを導入した膀胱癌細胞とnegative control siRNAを導入した膀胱癌細胞から蛋白を抽出し、プロテオーム解析およびingenuity pathway解析を行い、CA2の下流遺伝子およびそのネットワークを検索することで、膀胱癌の浸潤過程におけるCA2の機能を明らかにする。2) H-ras Tgラット浸潤性膀胱癌モデルを用いたCA2 inhibitorによる浸潤抑制効果の評価平成26年度のin vitro評価で最も膀胱癌浸潤抑制効果が強かったAcetazolamideをBBNおよびPEITCによる initiation処置を行ったラットに投与し、浸潤性膀胱癌の発生が抑制されるか否かを検討する。
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