研究課題/領域番号 |
25462500
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
久保 誠 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (40464804)
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研究分担者 |
佐藤 威文 北里大学, 医学部, 講師 (50286332)
石山 博條 北里大学, 医学部, 講師 (60343076)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / 放射線治療 / 免疫応答 / endogenous / vaccine |
研究概要 |
腫瘍に対する放射線治療効果は直接的な殺細胞効果のみと考えられてきたが、原発巣への放射線治療によって照射されていない転移巣が縮小する現象がしばしば確認される。このことは、放射線照射が抗腫瘍免疫応答を誘導し得ることを示唆しており、この機序の解明は癌治療における大きなブレイクスルーをもたらす可能性がある。 インフォームドコンセント後、本研究に同意いただいた前立腺癌患者より末梢血を採取した(ランダマイズ化した研究ではないため、放射線治療法の選択は患者自身による)。平成26年3月時点でエントリー頂いた患者数は次の通りである。イリジウム192高線量率組織内照射法(HDR)17名、ヨウ素125永久挿入密封小線源療法(LDR)31名、強度変調放射線療法(IMRT)3名、定位的放射線治療(SRT)1名。末梢血中のリンパ球動態をフローサイトメトリーにより解析した。 治療前後の比較が可能なLDR施行患者26名において、末梢血中のT細胞、B細胞、NK細胞の比率に大きな変化は認められなかった。しかしながら、活性化CD3+T細胞で1.1~2.7倍、活性化CD4+T細胞で1.1~4.2倍、活性化CD8+T細胞で1.3~3.7倍の上昇が認められた。また同様に比較可能なHDR施行患者7名において、活性化CD3+T細胞で1.5~2.5倍、活性化CD4+T細胞で1.3~2.4倍、活性化CD8+T細胞で2.1~4.7倍の上昇が認められた。これらの結果は、前立腺癌に対する放射線治療によってT細胞サブセットの活性化が誘導されたことを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
統計学的解析の観点から、各放射線治療群で20名の登録を考えている。平成25年度末の時点でLDRはその数を満たしているが、HDR,IMRT,SRTは目標数に到達していない。本研究はランダマイズ化しておらず、放射線治療法の選択は患者自身にある。研究計画の特性上、各群の目標数に違いが出てしまうのは避けられない。しかしながら、末梢血リンパ球サブセットのフローサイトメーター解析は順調に進行しており、平成25年度の研究計画は概ね遂行できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
患者末梢血におけるリンパ球サブセット解析で、放射線治療に伴い活性化T細胞サブセットの上昇を認め、放射線治療が免疫応答を惹起しうることが示唆された。今回の解析では、前立腺癌抗原に特異的なT細胞応答の解析について実施していないため、癌抗原特異的な免疫応答が誘導されているか今後確認する必要がある。また、血清中のサイトカインや内在性抗原に関する解析も随時実施していく。今年度も随時、HDR、IMRT、SRTについても症例数を蓄積していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究計画には蛍光標識抗体が必要であるが、蛍光標識の違いによって購入価格は一律ではない。購入予定であった抗体価格の計算にズレが生じてしまい、次年度使用額が発生した。 今回生じた次年度使用額は平成26年度分の物品費に使用する予定である。また、平成26年度の使用に関しては、このようなズレが生じないように研究計画書に沿った適正な使用を心がける。さらに、自身の支払依頼書を管理すると共に、科学研究費管理システムStepを有効に活用していく予定である。
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