研究課題
癌治療の成績向上には、原発巣のみならず転移巣の制御がポイントである。腫瘍に対する放射線治療の効果は、これまで直接的な殺細胞効果のみと考えられてきた。しかしながら、原発巣に対する放射線治療で「放射線照射されていない転移巣が縮小するabscopal effect」が臨床的に確認されており、これは局所から全身への抗腫瘍免疫応答の誘導無しには説明できない。そこで本研究では、放射線治療によって誘導される抗腫瘍免疫応答の機序を、実臨床における患者末梢血で詳細に解析し、放射線誘導型の新たな癌ワクチン(Endogenousワクチン)開発の可能性を探ることを目的とした。放射線治療による抗腫瘍免疫応答メカニズムを明らかにするために、放射線治療を実施した前立腺癌患者を対象に、治療開始から起算して定期的に末梢血を採取した。末梢血中の各種リンパ球サブセットの動態解析と血漿中サイトカインの測定を行った。ヨウ素125永久密封小線源療法(LDR)を施行した前立腺癌患者末梢血の解析から、治療開始後から活性化T細胞の割合が徐々にそして二峰性に増加することを確認した。これらの細胞の上昇とは逆に制御性T細胞や骨髄系由来サプレッサー細胞は減少した。また、LDRを施行した35症例の血漿中サイトカインを測定したところ、約半数の症例でInterleukin-2を検出した。それら症例の中には、治療前よりも上昇する例や減少する症例を認め、放射線治療が与えた効果を反映している可能性を示唆した。今回の結果から、放射線治療は免疫応答を惹起できると考えられ、その誘導機序も含めて更に解析を進め、放射線治療による内因性ワクチン効果を明らかにしていきたい。
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