研究課題/領域番号 |
25462502
|
研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
中島 淳 東京医科大学, 医学部, 教授 (10167546)
|
研究分担者 |
大野 芳正 東京医科大学, 医学部, 准教授 (40266482)
堀口 裕 東京医科大学, 医学部, 准教授 (60229234)
橘 政昭 東京医科大学, 医学部, 教授 (70129526)
橋本 剛 東京医科大学, 医学部, 助教 (10421033)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 泌尿器系癌 / 炎症 / NFkappaB |
研究概要 |
本研究では泌尿器系癌における免疫・炎症性応答の重要性とその治療への応用を検討した。これまで開発してきたNFkappaB阻害剤がin vitroにて48時間後にPC3細胞に対して12.5 μg/ml以上の濃度で90%以上の殺細胞効果を示したが、新たに開発した誘導体12.5, 25, 50 μg/mlの殺細胞効果はそれぞれ25%, 50%, 50%であり更に強力な誘導体の開発の必要性が示唆された。Legumainは免疫・炎症に関与するプロテアーゼと考えられており、前立腺癌培養細胞においてlegumainが発現していることが示された。手術摘出後の前立腺癌においても免疫組織化学的にlegumainの局在が示され、vesicular patternを示す症例ではdiffuse patternを示す症例に比べて病理学的病期、Gleason score、腫瘍径などが進行しており、5年非再発率は有意に低く、免疫炎症応答への関与が示唆されるlegumainの存在様式が前立腺癌のaggressivenessに関与していることが示された。一方、PSAなど術前因子とlegumainの発現patternとの間に関連性は認められなかった。低酸素などの刺激下でlegumainの発現増強は認められず、TNF, LPSなどの刺激ならびに低酸素条件を変えての実験が望まれる。Docetaxel治療が施行された去勢抵抗性前立腺癌患者においてPSAが50%以上低下する(PSA反応)症例は予後が良好であり、PSA反応を示す症例は有意にCRPが低値であった。さらには転移性腎細胞癌においてもneutrophil-to-lymphocyte ratio (NLR)が予後因子であることが示され、泌尿器系癌においてCRPやNLRなどの炎症性マーカーが予後と有意に関連し、炎症性免疫応答の重要性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最近泌尿器系悪性腫瘍においてサイトカインや炎症性免疫応答がその病態生理に深く関与していることが示唆されている。去勢抵抗性前立腺癌における抗癌化学療法の反応性とCRPの関連性や進行性腎細胞癌におけるNLRの予後因子としての意義が示され、進行性泌尿器系癌の病態生理における炎症性応答の重要性が示唆された。近年炎症・免疫と関連付けられるlegumainの前立腺癌のaggressivenessへの関与が示され、前立腺癌の病態生理におけるlegumainの重要性が示唆された。新規に開発されたNFkappaB阻害剤による前立腺癌培養細胞に対する殺細胞効果が示され、その誘導体の殺細胞効果を検討したが、さらに強力な誘導体の開発を目指したいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
当該年では進行性泌尿器系癌の治療の反応性や予後とC-reactive proteinやneutrophil-to-lymphocyte ratioなどの炎症性マーカーとの関連性が示唆された。CRPの産生や炎症応答と深く関連し、泌尿器系癌のparacrineやautocrine growth factorとも考えられているIL-6や腫瘍随伴症候群とも関連するTNFなどの炎症性サイトカインの転写に関係しているNFkappaBの阻害剤の開発と治療への応用の可能性が示唆され、新規に開発されたNFkappaB阻害剤の抗がん剤としての可能性が示唆されたが、次年度以降はその誘導体の開発や各種泌尿器系癌に対するそれらのスクリーニング実験、さらには動物を用いてin vivoにおける抗腫瘍効果の検討などの実験をおこなうよていであり、次年度以降に支出が見込まれ、予算配分を次年度以降に多く配分せざるを得ない状況である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初、NFκB活性の阻害を目指して新たに合成した新規薬剤の前立腺癌細胞株であるDU145,JCA-1,LNCAP,PC-3などの泌尿器系癌に対する抗癌治療実験として増殖・進展ならびに転移の抑制効果をin vitroおよびin vivoにおいて検討する予定であったが、新規に合成した阻害薬のこれら細胞に対する抗腫瘍効果が十分な効果を発揮しなかったために、当初予定していた転写因子への作用やその作用機序の解明、in vivoの実験などを翌年以降に計画することとした。 さらに新たに合成した阻害薬のなかで前立腺癌細胞株であるDU145,JCA-1,LNCAP,PC-3などの泌尿器系癌に対する強力な抗癌作用を有する薬剤をスクリーニングしており、その中でもっとも強力な阻害剤に焦点をあて、in vitroの実験においてその薬剤のNFκB活性に及ぼす影響や他の転写因子などに及ぼす作用など新規薬剤の作用機序の解明ならびにin vivoで担癌ヌードマウスを用いた抗癌治療実験で新規薬剤のin vivoにおける抗腫瘍効果を検討する予定である。
|