研究課題
腎がん細胞株を用いて、グルコース枯渇状態での遺伝子発現を調べるため、グルコース枯渇条件下での遺伝子発現を、次世代シーケンサーを用いて網羅的に解析したところN-GlcNAc2修飾の基質となるUDP-GlcNAc合成経路、小胞体ストレス応答経路の遺伝子発現が上昇し、分裂期キナーゼを含むG2/M細胞周期関連遺伝子の発現が抑制されることがわかった。N-GlcNAc2修飾タンパク質が産生され、G2/M期にアポトーシスを起こすグルコース枯渇に感受性を示す癌細胞株と、N-GlcNAc2修飾タンパク質が産生されずグルコース枯渇に耐性を示す癌細胞株とがある。さらにp53のリン酸化や腎がんの原因のがん抑制遺伝子とされるVHL statusも関連するようである(Isono T et al. PlosOne REVISING)。転移性腎細胞がん262例のdatabaseからは、20例の膵転移症例について注目し、①腎摘後晩期に再発すること、②比較的膵単独転移が多く、外科的切除が有効な症例が多く、分子単独治療の効果も秀逸であること。③したがって、転移後の生存期間も10年以上の長期生存も少なくないこと。などがわかった。(欧州泌尿器科学会で報告予定、論文投稿中)。
2: おおむね順調に進展している
当初目的である臨床サンプル解析の前実験として、細胞株を用いてグルコース枯渇という比較的シンプルなストレスによる遺伝子発現について、次世代シーケンサーを用いた網羅的な解析をおこない、新しいシグナルの解明に繋がった。次世代シーケンサーを用いた実験・解析も習得し、臨床サンプルの解析へと進んでいる。
① databaseから、A群 腎摘後に長期無再発症例、再発をしたが、B群 治療に良く反応し5年以上生存例、C群 再発予後不良例。以上の3群にわけて臨床サンプルの解析をすすめ、腎がんの進行・転移に関わる遺伝子変化と、治療効果と関連する遺伝子変化の解明に向けて調べる。② グルコース枯渇下での腎がん細胞の遺伝子応答は、これらの治療薬の機序に対する新しい知見を提供し、治療薬及び治療法の進歩に資することを期待している。今後、腎がん細胞株を用いての腎がんのグルコース枯渇下でのシグナルの解明を継続するとともに、臨床検体での網羅的発現解析をおこなう。
次世代シーケンサー関連物品の単価が大きいため、差額は次年度と合わせて使用する予定差額は次年度と合わせて使用する予定である。少額のため特に使用計画の変更はない。
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