研究課題
われわれはこれまでに、腎がんの分子標的治療におけるさまざまな臨床因子・問題点などをあきらかにしてきた。腎がんの分子標的治療は、グルコースをはじめとしたさまざまな物質の細胞内取り込み抑制を行なうmTOR阻害剤やチロシンキナーゼ阻害剤である血管新生阻害剤による治療をおこなっている。今回は、グルコース枯渇という比較的シンプルなストレスによる遺伝子発現について、次世代シーケンサーを用いた網羅的な解析をおこない、新しいシグナルの解明に繋がった。すなわち、腎細胞がん株では、NC65, Caki1, Caki2, ACHNの4種はVHLがwild typeであり、SW839, VMCR-RCW, KMRC-1はVHL遺伝子の変異を認めた。4種のVHL wild typeの腎がん細胞株はグルコース枯渇条件下にてN-GlcNAc2修飾タンパク質群が小胞体に蓄積し、小胞体ストレス応答の亢進を認め、G2/M細胞周期が抑制され、有糸分裂カタストロフィー様の細胞死が観察された。VHL遺伝子の変異のある3種の細胞株では、G1/Sで細胞周期が抑制され、細胞死は認めなかった。これは、VHLがん抑制遺伝子の変異を認める腎細胞がんでは、血管新生阻害剤によるグルコース枯渇において増殖抑制を認めるものの、細胞死に至らないという、腎がん治療の現在の臨床と非常にmimicしており、今後、この耐性機構・メカニズムを明らかにして、臨床での治療耐性を克服するヒントを掴みたいと考えている。現在、腎がん臨床サンプルを用いた次世代シーケンサーによる解析も継続して進めており、すなわち、databaseから、A群 腎摘後に長期無再発症例、再発をしたが、B群 治療に良く反応し5年以上生存例、C群 再発予後不良例。以上の3群にわけて臨床サンプルの解析をすすめ、腎がんの進行・転移に関わる遺伝子変化と、治療効果と関連する遺伝子変化の解明に向けて研究を継続している。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 8件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 2件)
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