研究課題/領域番号 |
25462506
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
守屋 仁彦 北海道大学, 大学病院, 講師 (20374233)
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研究分担者 |
橘田 岳也 北海道大学, 大学病院, 助教 (40374441)
野々村 克也 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (60113750)
三井 貴彦 北海道大学, 大学病院, 助教 (90421966)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 尿道下裂 / 長期予後 |
研究概要 |
尿道下裂は男児におけるもっと頻度の高い先天異常の一つである。外陰の異常であることから、幼少時における外観の修復とともに排尿機能、思春期以降における性的予後が重要となる。これまで我々は、尿道下裂症例の長期予後調査を行ってきており、思春期以降の外陰外観や性行動、内分泌状態などの検討を行ってきた。それらの結果から、性的活動性には明らかな差はないものの外観では陰茎サイズに不満を訴える頻度が高いことを明らかにした。この知見をもとに、これまでのフォローアップの身体診察所見から思春期以降の伸展陰茎長とそれに影響を与える因子について検討を行った。 当院外来で経過観察中の尿道下裂症例のうち、2008年4月以降に15歳以上で伸展陰茎長を測定した22人を対象とした。出生時体重、尿道下裂の程度、診察時の身長や内分泌所見などと伸展陰茎長の関係を検討した。伸展陰茎長の測定は単一験者にて行い、尿道下裂の程度は近位型と遠位型に大別した。 測定時の年齢は15.0歳から29.5歳(中央値17.5歳)であり、伸展陰茎長は45㎜から155㎜(中央値112.5㎜)であった。年齢と伸展陰茎長の相関は見られなかった。伸展陰茎長が112㎜以下の群(S群11例)と113㎜以上の群(L群11例)に分け背景因子を比較すると、近位型の頻度がS群で9例(81.8%)であったのに対しL群で4例(36.4%)であり、有意差を認めた。診察時の内分泌所見(LH:S群:3.3±1.8 mIU/ml、L群:7.0±11.9 mIU/ml、FSH:S群:4.9±1.7 mIU/ml、L群:12.0±25.9 mIU/ml、テストステロン:S群:393.6±188.6 ng/dl、L群:527.6±179.1 ng/dl)には差を認めなかった。出生時体重、診察時の身長では差を認めなかった。 尿道下裂症例のうち、伸展陰茎長の短い群では近位型尿道下裂の症例が有意に多く、尿道の形成不全と同様に陰茎形成における先天的要因の関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
尿道下裂症例の思春期における陰茎長を検討し、出生時の尿道下裂の程度が思春期の陰茎長に影響を与えるもっとも重要な因子であることを解明した。この所見から、尿道下裂は単に尿道の形成が不良であるのみではなく、陰茎自体の形成が不良であることが推察される。尿道のみならず陰茎自体の発生という観点からの尿道下裂発生の更なるメカニズムの解明が求められる結果であった。 このような結果が出てきており、計画はおおむね進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、未治療尿道下裂症例の精巣サイズの測定は順調に進んでおりテストステロン投与した症例の精巣サイズの評価も行い、テストステロン投与の精巣への短期的影響を含めて症例を蓄積中である。また、思春期を迎えた症例については陰茎サイズの測定とともに内分泌学的評価も行っており、症例を蓄積している。計画はおおむね順調に進んでおり、今後の研究を継続する予定である。
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