研究課題
マウスを用い、下部尿路機能制御におけるmGluR1とmGluR5を介する神経伝達の役割を検討した。野生型マウスでは、筋電図上、排尿中外尿道括約筋がburstingとsilenceを繰り返すoscillationが見られる。一方、mGluR1ノックアウト・マウスではoscillation中、本来のsilence部分で不規則な外尿道括約筋活動が見られた。加えて、mGluR1ノックアウト・マウスは、bursting頻度が野生型に比べて増加していた。この結果は、脊髄mGluR1が排尿時外尿道括約筋活動silence期の抑制性制御に関わることを示す。慢性脊髄損傷の尿排出障害では、排尿期における外尿道括約筋活動の抑制性制御の障害が見られることから、mGluR1神経伝達障害が関与している可能性が暗示される。一方、排尿時膀胱活動における最大排尿収縮圧を比較した場合、野生型よりもmGluR1ノックアウト・マウスの方が高値であった。これは、外尿道括約筋活動silence期の抑制性制御障害により、尿道抵抗が高くなったためだと推測される。蓄尿期膀胱機能の比較をしたところ、mGluR1ノックアウト・マウスは野生型に比し、膀胱容量が有意に大きいことが確認された。mGluR5神経伝達の下部尿路機能における役割を精査する研究では、mGluR5拮抗薬を全身投与し、その効果を検討した。mGluR5拮抗薬は、排尿中の外尿道括約筋活動に影響しなかったことから、mGluR5神経伝達は正常マウスの外尿道括約筋活動に関与しないことが示唆された。膀胱活動評価において、同薬剤投与は最大排尿収縮圧に影響しなかった。一方で、蓄尿期の膀胱容量を約25%増加した。以上の結果は、mGluR5神経伝達が、膀胱蓄尿期の興奮性求心性伝達に重要であるが、排尿期の膀胱、及び、外尿道括約筋活動には関与していないことを示す。
2: おおむね順調に進展している
齧歯動物を用いたin vivo実験において、これまでに蓄積された技術と経験が生かされたため、比較的順調に進展していると考える。
慢性脊髄損傷マウスを作製し、この疾患モデルにおける下部尿路機能評価を行う。mGluR1ノックアウト・マウス、又は、mGluR5拮抗薬を用いて、慢性脊髄損傷マウスにおけるmGluR1、及び、mGluR5を介する神経伝達が病的排尿状態に関わっているかを検証する。正常マウス、及び、慢性脊髄損傷マウスの下部尿路機能に対するPACAP-38脊髄腔内投与の効果を精査する。
正常マウスとmGluR1ノックアウト・マウスの基本的下部尿路機能評価、及び、正常マウス下部尿路機能に対するmGluR5拮抗薬の効果評価を最優先して行い、今後使用予定の機器を当該年度内に急いで購入する必要がなかったため。実験の進捗状況に応じ、今後予定している機器購入のために逐次使用する。
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