研究課題/領域番号 |
25462513
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
本田 正史 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (20362890)
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研究分担者 |
武中 篤 鳥取大学, 医学部, 教授 (50368669)
齊藤 源顕 高知大学, 医歯学系, 教授 (60273893)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 下部尿路機能 / 新規受容体 / 膀胱内圧測定 |
研究概要 |
Cyclophosphamide(CYP)誘発膀胱炎ラットを作成し、CYPにより誘発される膀胱過活動に対するrSNSR1 agonistの効果を検討した。雌Sprague-Dawley(SD)ラットを使用し、CYP誘発膀胱炎ラットはCYP 200mg/kgを腹腔内投与して作成した。CYP投与後48時間後にウレタン麻酔下に連続膀胱内圧測定を施行。rSNSR1 agonistである、bovine adrenal medulla 8-22(BAM 8-22)を静脈内または脊髄腔内投与し、薬剤の投与前後で膀胱内圧測定のパラメーターを測定し比較検討した。結果としてCYP膀胱炎群に対するBAM 8-22の静脈内投与(10-100 μg/kg)および脊髄腔内投与(0.03-0.3 μg)で、排尿間隔の容量依存的な増加が認められたが、静止時膀胱圧および最大膀胱圧については投与前後で有意な変化は認めなかった。以上よりウレタン麻酔下のCYP誘発膀胱過活動に対してrSNSR1の活性化が抑制効果を持つことが示唆された。 また、正常ラットへのBAM 8-22膀胱内注入による膀胱機能の変化を調べた。雌SDラットを用いてウレタン麻酔下に連続膀胱内圧測定を行い、BAM 8-22(100, 300, 1000nM)を膀胱内注入し、薬剤投与前後のパラメーターの変化を調べたところ、容量依存的に排尿間隔および排尿閾値圧の増加を認めた。また、これらの変化はカプサイシン前処理ラットでも同様に認められた。以上より、rSNSR1 agonistの膀胱内注入は、カプサイシン感受性C線維以外の経路を介して抑制反射を抑制すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、ラット下部尿路機能障害におけるrSNSR1の役割を調べるため、CYP誘発膀胱炎ラットを用いて実験を行った。CYP誘発膀胱炎ラットに対してrSNSR1 agonistであるBAM8-22を経静脈的および脊髄腔内投与し、rSNSR1の活性化がCYPで誘発される膀胱過活動に対して抑制的に作用することが判明した。この事はrSNSR1が正常ラットの排尿調節機構においてのみ役割を有するのではなく、下部尿路機能障害という病態下においても役割を担っている可能性があることを示したものである。rSNSR1を過活動膀胱等の下部尿路 機能障害の治療応用へ展開するための研究基盤を確立することが本研究課題の主要な目的であり、本知見が得られた意義は大きいと考えている。 また、あわせて正常ラット排尿反射に対するrSNSR1 agonistの膀胱内注入の効果という、今までの経静脈的もしくは脊髄腔内投与にかわる新たな薬剤投与経路での効果の可能性についても明らかにできており、おおむね順調に研究は伸展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究結果より、①CYP誘発膀胱炎ラットを安定して作成することが可能であること、②作成したCYP誘発膀胱炎ラットにおいてrSNSR1が一定の役割を有する可能性があること、③rSNSR1 agonistの膀胱内注入が正常ラット排尿反射を抑制する効果を有すること、などが判明している。この結果を踏まえて、①CYP誘発膀胱炎ラットを用いた覚醒下およびウレタン麻酔下連続膀胱内圧測定:BAM 8-22の膀胱内注入の効果、②正常ラットおよびCYP誘発膀胱炎ラットの尿道、膀胱、骨盤神経節、脊髄後根神経節(L6-S1)でのrSNSR1の局在を定量的RT-PCR(qRT-PCR)、in situ hybridization(ISH)および免疫組織化学とISHの2重染色で分析、を行う。 これらの結果を参考にラット下部尿路機能障害の違うモデルとして過活動膀胱が誘発されることが知られている自然発症高血圧ラット(spontaneous hypertensive rat : SHR)を用いて、①覚醒下およびウレタン麻酔下連続膀胱内圧測定:BAM 8-22の経静脈的、脊髄腔内、膀胱内注入の効果、②尿道、膀胱、骨盤神経節、脊髄後根神経節(L6-S1)でのrSNSR1の局在を定量的RT-PCR(qRT-PCR)、in situ hybridization(ISH)および免疫組織化学とISHの2重染色で分析、を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品として購入を予定していた試薬、ガラス・プラスチック容器などは、既に購入していた物品で実験を遂行することが可能であったため、購入を差し控えた。また、膀胱内圧測定に使用するデータ収録システムについて、既存の機種では同時に多くのラットの膀胱内圧測定ができないため新規機種の購入を検討していたが、平成25年度の研究遂行においては既存機種でも十分に対応可能であることが判明したため、購入を差し控えた。これらの理由により次年度使用額が生じた。 平成26年度以降の経費の主要な用途は消耗品であり、実験動物(SDラット、SHRラット)、試薬、ガラス・プラスチック容器を購入する計画である。設備備品として、既存のデータ収録システムに接続してデータ管理するノート型パーソナルコンピューター1台を購入する計画である。また学会で研究成果を公表し情報交換するために必要な出張経費、および国際学術誌での論文発表の際の諸経費として使用する予定である。
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