研究課題/領域番号 |
25462514
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
石井 亜矢乃 岡山大学, 大学病院, 助教 (00423294)
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研究分担者 |
和田 耕一郎 岡山大学, 大学病院, 助教 (20423337)
狩山 玲子 岡山学院大学, 人間生活学部, 准教授 (40112148)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 尿路感染症 / プロバイオティクス / 乳酸菌 / バイオフィルム / 緑膿菌 / MRSA |
研究実績の概要 |
難治性・再発性尿路感染症に対して、乳酸菌プロバイオティクスに関する臨床研究ならびに基礎研究を実施した。 1、平成27年度までに難治性尿路バイオフィルム感染症(神経因性膀胱などの基礎疾患を有する尿路感染症)患者1名と、明らかな基礎疾患はなく膀胱炎を繰り返す再発性膀胱炎患者11名に対し、過酸化水素の産生能が高い乳酸菌膣坐剤を投与し、6名で1年投与が終了した(1名脱落症例)。27年度に新たに1年投与が終了した再発性膀胱炎患者2名における乳酸菌投与前後での尿路感染症発症頻度は、投与前3-6回/年(平均4.5回/年)、投与後0-4回/年(平均2.0回/年)であり、尿路感染症の発症頻度は明らかに減少していた。 2、in vitro実験は、MRSA OP3株と過酸化水素産生能が異なる乳酸菌3株(Lactobacillus crispatus GAI98322,GAI99099,GAI99098)を用いた。コロニーバイオフィルム法では、メンブラン上のMRSAバイオフィルム形成は乳酸菌により抑制された。また、乳酸菌バイオフィルムはMRSAの発育を抑制した。これらの抑制効果は、過酸化水素産生能が高い乳酸菌(L. crispatus GAI98322株)で顕著であり、通常培養よりも5%CO2下培養において早期に認めた。26年度に緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa OP14-210株)と尿路感染症由来の大腸菌(E. coli OP128株)でも同様の実験を行ったが、乳酸菌の抑制効果は、緑膿菌>大腸菌>MRSAの順であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床研究は対象となる患者が少なく、平成27年度までの患者数は12例と少ない状況であり、投与開始後1年が経過していない症例が5例(脱落症例1例除く)ある。 in vitro実験についても研究分担者の転出に伴い遅滞が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
1、女性尿路感染症患者に過酸化水素の産生能が高い乳酸菌(Lactobacillus crispatus)膣坐剤を継続して投与し、症例登録数を随時増やしていく。これからの登録患者では1年の投与はできない症例となるが、投与期間中の膀胱炎罹患回数を1年に換算し、比較していく予定である。 またすでに登録している症例で28年度に1年を経過する5症例については、乳酸菌投与前後での尿中・膣内細菌叢の菌種や菌量、1年における膀胱炎罹患回数を指標とし、有効性を評価する。投与終了後も研究期間中は膀胱炎罹患回数を調査していく。 2、in vitro実験は、緑膿菌、大腸菌、MRSAを用いて各種抗菌薬と乳酸菌の併用効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床研究は平成27年度も症例登録数が少なかったため、予定額を使用しなかった。 in vitro実験は研究分担者の転出に伴い遅滞が生じているため、予定額を使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し額で、平成28年度の物品費として、細菌培養用培地・シャーレ、ボトル・チューブ・チップ類、その他の試薬・器具類などを購入する。また研究費は研究成果発表のための学会や研究会への出張旅費に使用する。その他、学内共同実験室の機器使用料金、論文掲載料への支払いなどにあてる。
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