研究課題
難治性・再発性尿路感染症に対して、乳酸菌プロバイオティクスに関する臨床研究ならびに基礎研究を実施した。1、平成28年度までに難治性尿路バイオフィルム感染症(神経因性膀胱などの基礎疾患を有する尿路感染症)患者2名と、明らかな基礎疾患はなく膀胱炎を繰り返す再発性膀胱炎患者15名に対し、過酸化水素の産生能が高い乳酸菌膣坐剤を投与し、11名で1年投与が終了した(2名脱落症例)。28年度に新たに1年投与が終了した再発性膀胱炎患者4名における乳酸菌投与前後での尿路感染症発症頻度は、投与前2-6回/年(平均4.0回/年)、投与後0-5回/年(平均2.0回/年)であり、尿路感染症の発症頻度は明らかに減少していた。2、尿路感染症のない閉経後女性に対し、乳酸菌タブレットの直腸・膣内細菌叢に及ぼす効果に関する臨床試験を平成28年10月より開始し、平成28年度23例に乳酸菌タブレットを経口投与した。現在も継続して症例を重ねている。3、in vitro実験では、尿路バイオフィルム感染症に対する乳酸菌プロバイオティクスの効果を、緑膿菌OP14-210株、大腸菌OE-89株、MRSA OS-60を用いて、フローセルシステムとコロニーバイオフィルム法で検討した。乳酸菌は過酸化水素産生能が高いLactobacillus crispatus GAI98322を用いた。フローセルシステムでは、乳酸菌により、緑膿菌、大腸菌、MRSAのバイオフィルムの形成は抑制された。また平成28年度はコロニーバイオフィルム法により、緑膿菌、大腸菌、MRSAに対する乳酸菌と抗菌薬(LVFX、ABK)との併用効果を検討した。メンブラン上の緑膿菌、大腸菌、MRSAの増殖は乳酸菌により抑制され、LVFX, ABKとの併用効果を示唆する結果であった。
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Acta Med Okayama
巻: 70 ページ: 299-302