研究課題/領域番号 |
25462524
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
戸澤 啓一 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40264733)
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研究分担者 |
郡 健二郎 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30122047)
林 祐太郎 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40238134)
廣瀬 泰彦 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 臨床研究医 (60381894)
岡田 淳志 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70444966)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | NF-kB / 尿路結石 / オステオポンチン |
研究概要 |
尿路結石は生活習慣病の一つであり、動脈硬化症と多くの共通点をもつ。例えば、発症機序、転写因子NF-kBによって病態形成が促進されること、炎症との関連、オステオポンチン(以下OPNと略す)の関与などである。これまで、私たちは腎尿細管細胞において、シュウ酸刺激、酸化ストレスが動脈硬化症と同様に、NF-kBによるシグナル伝達経路を活性化させることを見いだした。これに引き続いて、結石形成が促進されることを発見した。また、NF-kBの活性化がアポトーシスを誘導し、ミトコンドリアの崩壊が結石原基となることも証明した。本研究では、これらの成果をふまえて、抗酸化作用を有するNF-kB阻害剤による尿路結石の再発予防効果を調べ、臨床応用の実現を目指す。 シュウ酸は尿細管細胞に様々な影響を与えていることが報告されている。そこで、シュウ酸刺激による尿細管細胞におけるNF-kBの活性化、オステオポンチンの発現について検討した。 シュウ酸0.5mM刺激後1~3時間にかけてIkBαのリン酸化およびp65の核移行によりNF-kBの活性化が確認できた。これに引き続いてオステオポンチンの発現が増強した。このシュウ酸刺激によるNF-kBの活性化はNAC 5mM添加により抑制され、オステオポンチンの発現も抑制された。シュウ酸刺激はNF-kBの活性化を通じて細胞傷害、炎症反応を起こしオステオポンチンの発現を促進した。 抗酸化剤でもあるNACはNF-kBの活性化を阻害することにより、炎症性サイトカインの発現、尿細管細胞のアポトーシス、オステオポンチン発現を抑制し、尿路結石形成の予防に有用な薬剤となりうると考えられた。また、オステオポンチンの発現のみでなく、シュウ酸刺激で誘導される腎でのマクロファージの誘導、尿細管での結晶形成も結石モデルマウスにおいてNACにより抑制されることが証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
転写因子NF-kBが尿路結石形成に強く関与しており、炎症性サイトカイン、マクロファージ、オステオポンチンなどの結石関連蛋白を介していることが、証明された。 また、NF-kB活性化阻害剤であるNACが細胞株および結石モデルマウスで結石形成を阻害することも示すことができた。他のNF-kB活性化阻害剤でも同様の結果が出つつあるが、すべてにおいては証明できていない。腎尿細管細胞株を用いた結晶付着実験も同様の状況であるが、全体としてはほぼ順調に結果が出ていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでの結石モデルマウスに加えてメタボリックシンドローム(MetS)モデルマウス:ob/obマウス(B6.V-Lepob/J)を用いて同様にNF-kB活性化阻害剤の効果を確認していく。最終的には、ヒトにおいてNF-kB活性化阻害剤が尿中結石関連蛋白、炎症性サイトカインを減少させうるかまで、明らかにしていきたいと考えている。
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