ウエスタンブロット法により、対照処置群、膀胱炎モデル群の膀胱機能を調節する知覚神経の存在するL6、S1位後根神経節においてプレイオトロフィン蛋白の発現の多い個体が存在することがわかり、また、膀胱機能に関与しないL4位後根神経節ではその発現が小さいという結果を得た。 続いて、L6、S1位の後根神経節においてプレイオトロフィン蛋白が発現するかどうか、また、正常ラットと膀胱炎モデルラットとではその発現に違いがあるかについて免疫組織化学手法を用いて調べてきたが、後根神経節での染色状態が一定せず、はっきりした結果は得られていなかった。しかし、今年度、実験方法、試薬等を見直し再実験したところプレイオトロフィン蛋白の組織染色で一定した結果が得られるようになり、後根神経節では神経細胞には存在せず、神経の細胞体を囲むようにして存在する衛星細胞にのみプレイオトロフィン蛋白の発現を認めることを証明できた。また、正常ラット群だけでなく対照処置群、膀胱炎モデル群でも衛星細胞にのみプレイオトロフィン蛋白が発現することが判明した。 さらに、プレイオトロフィン蛋白の神経に対する作用を生理学的に証明するためにパッチクランプ用増幅器、測定用顕微鏡、マニピュレーション装置を導入し調整を続け、また、神経細胞の初代培養も可能になったが、結果をまとめる段階には至らなかった。 今研究では、プレイオトロフィン蛋白が正常ラット末梢知覚神経節である後根神経節では神経細胞ではなく衛星細胞に発現すること、膀胱炎モデルラットでもその発現様式には変化がないこと、その発現量は正常動物と比べ膀胱炎モデルで増加していることを明らかにすることができた。
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