研究課題/領域番号 |
25462541
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
畦元 将隆 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (70264736)
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研究分担者 |
神沢 英幸 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00551277)
西尾 英紀 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 臨床研究医 (10621063)
郡 健二郎 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30122047)
林 祐太郎 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40238134)
小島 祥敬 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (60305539)
水野 健太郎 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70448710)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 精巣腫瘍 / 精子幹細胞 / 細胞分化 |
研究概要 |
精巣がんの発生機序は不明であり、さまざまな組織型があるため適切な培養細胞株がなく、基礎研究の進展をさまたげている。私たちは、停留精巣における造精機能障害の病態解明のため研究を進めてきたが、その一因として精子幹細胞の分化異常を明らかにした。一方、複数のがんにおいて「がん幹細胞」の存在が注目されており、正常の幹細胞との違いが明らかになりつつある。本研究では、精巣のがん化に関わる幹細胞の形質変化を解明することを目的とする。研究計画では、新規精巣がん細胞株の樹立をめざし創薬への応用を考えているが、本年度はその前段階として、(1) ヒト精巣腫瘍における新規の幹細胞マーカーであるUTF1の発現を定量PCR法、免役染色によって確認し、(2) 精子幹細胞の分化障害モデルである停留精巣モデルを用い、精子幹細胞の分化メカニズムをmicroRNAに注目して検討した。以下にその概要を述べる。 (1) 精巣がん発生には、精子幹細胞の特性変化が関与すると考えられているが、私たちは、UTF1が精子幹細胞の挙動をあらわす特異的マーカーであることを動物実験から確認している(Kamisawa H, Mizuno K, et al. J Urol., 2012)。このUTF1を用い、ヒト精巣腫瘍において、組織型によって発現量が異なることを明らかにした。 (2) 近年、DNA メチル化・ヒストン修飾・microRNAなど、DNAの塩基配列によらない遺伝子発現制御機構の重要性が高まっている。精子幹細胞の分化過程における、これらエピジェネティックな発現調節機構は全く不明であるため、実験動物におけるマイクロアレイ解析から、miR-135aが関与することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、精巣がん組織(ヒトあるいは実験動物)における特異的発現変化を示す遺伝子群を探索することを予定していたが、ヒト組織における検討を行うことができた。また、がん自然発症モデルではないが、停留精巣モデル動物を用いて、マイクロアレイ解析を行い、特異的発現を示す遺伝子群を探索した。この解析には、mRNA と、mircoRNA の両方で検討を行い、本年度はこのうちmicroRNAの解析結果をまとめ上げることに成功した。ラット停留精巣におけるマイクロアレイ解析から5つのmicroRNA変化を同定し、定量RT-PCRからmiR-135aが有意に発現低下していることを確認できた。さらに複数の予測プログラムから、miR-135aの標的遺伝子としてFoxO1遺伝子を同定することができた。他の研究グループからも、FoxO1遺伝子はマウスの精子幹細胞における多能性を維持するために働くことが報告されており、私たちの研究成果との整合性が確認された。 また、mRNAの解析においても、精子幹細胞の分化においてヒストン脱メチル化酵素の一つである、Kdm5aが関与することを示すことができた。Kdm5aは、ヒストンタンパクH3K4を脱メチル化することで遺伝子発現を制御することが知られており、精子幹細胞の分化過程でもこうしたエピジェネティックな発現調節機構が働くことが示されたのは初めてのことと思われた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた結果から、miR-135aや、その標的遺伝子であるFoxO1遺伝子のさらなる機能解析を進めたい。また、ヒト精巣腫瘍の組織中におけるこれらの遺伝子発現変化を解析し、精巣腫瘍の発生におけるこれら遺伝子の役割を明らかにしたいと考えている。また、新規細胞培養株を樹立するため、精巣組織からの細胞分散・初代培養系を確立し、候補遺伝子を導入することでどのような形質変化が起こるのかを観察したい。研究体制に基づき、情報開示・学会発表を適宜行いつつ、学内倫理審査委員会からの提言・指導のもとに臨床情報の管理、サンプルの保管も行っていく予定である。また、初代培養系の確立には、継続的な細胞培養の操作が必要であるため、技術補助員や研究分担者との連携をはかりつつ、効率的に研究を進めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画では、研究内容発表のため国内旅費を計画していたが、当該年度では旅費を使用することがなかった。また、細胞培養やその他の操作にともなう人件費が当初見積もった金額よりも下回ったため、次年度使用額が生じたと考えられた。 これまでに得られた研究成果を国内外の関連学会で研究発表するための旅費の一部として使用することを計画している。また、今後は細胞培養の操作が増えることが予測されるため、培養液、各種試薬、人件費、などに充当する計画を立てている。
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