研究実績の概要 |
[背景]妊娠高血圧腎症、前置胎盤、常位胎盤早期剥離、あるいはplacental mesenchymal dysplasia (PMD)ではplacental permeability dysfunction (PPD)がある可能性があるので、occult fetematernal transfusion(occult FMH、臨床的に問題のないFMH)が起こっている可能性がある。また、分娩監視装置における胎児心拍数図においてnon-reassuring fetal status (NRFS)を示した妊婦ではoccult FMHが高頻度である可能性がある。これらについて検討した。[方法] PMDが想定される11名妊婦(5名の妊娠高血圧腎症、3名の前置胎盤、2名の常位胎盤早期剥離、1名のPMD)ならびにそれらを合併しない対照妊婦35名の計46名妊婦から分娩前の41血液検体ならびに分娩後の39血液検体提供を受けた。FMH量を推定するために以下の2種を用いてフローサイトメトリー法で胎児血を検出した:IQ Product BV社製FCC kit、ならびに私どもが開発したβ―γ法(Hb-βあるいはγchainを検出する). 母体血液中の総赤血球中, HbFのみを発現している赤血球割合あるいは、Hb-γchainのみを発現している割合が0.02%以上の場合、FMHと診断した。[成績] FMHは妊娠高血圧腎症1例、前置胎盤1例、j常位胎盤早期剥離1例、PMD1例、対照群1例の合計5例に認められた。うちPMDの1例はclinical FMHで他の4例はoccult FMHであった。FMH出現率はPPD群で対照群に比し有意に高かった(36% [4/11] vs. 2.9% [1/35], P=0.009)。FMH出現率はNRFS群では7.7%[1/13]であり、非NRFS群の12%[4/33]と同等であった。[結論]胎児血が母体血に流入する危険は妊娠高血圧腎症、前置胎盤、常位胎盤早期剥離、あるいはPMDを合併しているとこれら非合併妊婦に比して高い。
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