前年度に施行した実験の追加実験及び、採取材料の解析を進めた。胎盤由来間葉系幹細胞の切迫早産に対する治療効果を検討するため、妊娠15日のICRマウスの子宮頸部にLipopolysaccharide(LPS)1ugを局注し、48時間までの早産とその時点での生存胎児数をカウントする方法で検討をつづけた。胎盤由来間葉系幹細胞またはその培養上清をLPS投与と同時に経静脈的に投与し、48時間後の早産発生率、胎仔生存率を比較した。しかし、個体ごとのLPSへの反応にばらつきが大きく、早産率と胎児生存率には有意差は得られなかった。採取した胎盤、子宮平滑筋における炎症性サイトカイン、および収縮関連タンパクの発現について、RT-PCR法にて解析を行ったところ、培養上清治療群においてIL1b、COX-2の発現が改善する傾向が得られたものの、有意差はなかった。 胎盤由来間葉系幹細胞の治療効果を高めるための検討としては、間葉系幹細胞をインターフェロンγで前処置する方法が、文献的に優れていたため、試行した。 さらにに胎盤附属物由来間葉系幹細胞の性質や治療効果が、子宮内炎症の暴露の有無で違いがあるかどうかについて、詳細な検討を進めた。以前、確立した子宮内感染ラットモデル(各羊水腔内にLPSを投与)より得られた臍帯由来間葉系幹細胞と、正常妊娠ラットより得られた臍帯由来間葉系幹細胞の比較をしたところ、前者では増殖能が高く、上皮系の表面マーカーの発現が多い細胞が採取されることが分かった。
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