研究課題/領域番号 |
25462554
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 一有 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (50456571)
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研究分担者 |
金山 尚裕 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70204550)
伊東 宏晃 浜松医科大学, 医学部附属病院, 教授 (70263085)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 近赤外線分光法 / 脳血液量 / 酸素動態 / 分娩 / 帝王切開 |
研究概要 |
平成25年度には、近赤外線分光法による母体脳(ヒト)の酸素動態モニタリングの臨床応用に向けた臨床検討を行った。近赤外線時間分解分光法(TRS法)を使用した妊婦脳の総ヘモグロビン、オキシヘモグロビン、デオキシヘモグロビンならびに脳組織酸素飽和度の絶対値の測定技術は、我々がその技術を確立した方法であり今年度学術雑誌に掲載された(Yamazaki K, Suzuki K et al, Cerebral oxygen saturation evaluated by near-infrared time-resolved spectroscopy during caesarean section; Clin Physiol Funct Imaging. 2013 Mar;33(2):109-16)。この方法を用いて、帝王切開時ならびに分娩時を中心として、妊婦の脳酸素のモニタリングを行ってきた。帝王切開時の測定においては、従来の経皮的末梢血酸素飽和度測定法では検出できない母体脳組織の低酸素状態の検出に成功し、症例を蓄積している。分娩時の測定においては、陣痛発来後、妊婦が子宮収縮とともに怒責をかけると同時に、妊婦の脳ヘモグロビン量が一時的に増加し、怒責の終了と同時に元の状態に戻る減少を捉えることに成功し、現在症例を蓄積している。また、このヘモグロビン量の上昇率は、妊娠高血圧症候群の症例で特に高いことが判明した。このことは、妊産婦死亡の主要な原因の一つである脳血管障害と妊娠高血圧症候群との関連を示唆する興味深い現象であると考え検討を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「近赤外線分光法による母体脳および胎盤の酸素動態モニタリングの臨床応用に向けた検討」について計画はおおむね順調に進行している。帝王切開の症例蓄積は平成26年4月の時点で約80例に達しており、分娩時の症例に関しては約100例に達している。脳血管障害の症例は1例測定することができたが、妊娠高血圧症候群の重症型である子癇発作の症例は未だ測定できていない。このような症例を増やすことが、臨床応用に向けては重要な事と考えている。また、動物実験については今年度は施行できなかったため、仮説の基礎的部分を強化するためにも今後行っていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
脳血流を調節する因子として、炭酸ガス(二酸化炭素)濃度にも注目し検討も行っている。適量の炭酸ガス濃度を保つことは、新生児の呼吸管理に重要であることが明らかになっている。炭酸ガスには血管拡張作用(特に脳血管)があり、新生児脳の血流を保持する効果があると考えられている。新生児で確認されているこのような炭酸ガスによる脳血流維持作用が、胎児においても同様に働いていることを仮説として提起し、母体脳の酸素動態のモニタリング、母体血の炭酸ガス濃度、臍帯静脈ならびに臍帯動脈の炭酸ガス濃度を同時に測定し、APGARスコアなどを中心とした新生児評価と比較検討することにより、仮説の実証をしていく予定である。また最終的には、母体への二酸化炭素投与の有効性を検討することを目標としている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は動物実験を施行できなかったため次年度使用額が生じた 臨床症例の進行を勘案し、平成26年度または平成27年度に動物実験を行う計画である。
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