研究課題/領域番号 |
25462555
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
味村 和哉 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50437422)
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研究分担者 |
遠藤 誠之 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (30644794)
金川 武司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40346218)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 胎盤形成 / ナノマテリアル / 妊娠高血圧症候群 / 酸化ストレス |
研究概要 |
胎盤形成およびそれに基づく病態発生に注目し、in vitro培養細胞系にナノマテリアルを添加し酸化ストレス、遊走・浸潤能などに対する影響を調べる。また、妊娠マウスにナノマテリアルを投与し、胎盤を低酸素・酸化ストレス環境下におくことで胎盤低形成モデルを作成する。どの程度の胎盤低酸素・酸化ストレス環境が妊娠高血圧症候群や子宮内胎児発育不全を惹起するのかを検討する。さらにDNAマイクロアレイ法によって胎盤の遺伝子発現の差異を網羅的に解析し、胎盤形成異常に影響する因子を分析するとともに、その胎盤形成の違いがもたらす母児の予後について分析することが目的である。 これまで我々は、ヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)にsFlt1を投与することでPIHの母体血管内皮モデルとして再現できることを報告してきた(Am J Obstet Gynecol. 2010;202:464.e1-6. Reprod Sci. 2010;17:556-63)。 今回我々はこの胎盤に対する低酸素・酸化ストレスを与える物質として、ナノマテリアルに注目した。これまでの共同研究において、妊娠16-17日目のBALB/cマウス尾静脈にナノシリカ(70、300、1000nm)を投与し、18日目に帝王切開を行い、胎盤の組織学的変化・細胞障害性について調べたところ、100nm未満の粒子でのみ胎盤の形態異常、流産を惹起した(Nat Nanotechnol. 2011;6;321)。 今回、我々はまずin vitroにおける検討として、ヒト絨毛癌のcell lineであるBeWo細胞、1stトリメスターのextravillous trophoblast cell lineであるHTR-8/SV neo細胞やマウス胎盤のトロホブラスト初代培養系を用いて、ナノマテリアルが与える酸化ストレスや、遊走・浸潤能などに与える影響を調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究目標として、妊娠初期トロホブラストモデルにナノマテリアルが与える影響として、in vitroモデルでの検討を行った。妊娠初期におけるトロホブラスト(栄養膜細胞)の脱落膜や子宮筋層への侵入および遊走(invasion/migration)、らせん動脈内皮細胞への置換(replacement)が正常胎盤形成過程に重要である。ヒト絨毛癌のcell lineであるBeWo細胞や1stトリメスターのextravillous trophoblast cell lineであるHTR-8/SV neo細胞をにナノマテリアルを投与し、酸化ストレスマーカーの発現を比較した。活性酸素による生体損傷を鋭敏に反映するDNA酸化ストレスマーカーである8-hydroxy-2'-deoxyguanosine (8-OHdG)や代表的な脂質酸化ストレスマーカーであるlipid peroxidation (4 hydroxy-nonenal)、タンパク質酸化ストレスマーカーであるprotein peroxinitrolysation (3-nitrotyrosine)などに関して、ELISA法や免疫染色法を行った。遊走/浸潤能はケモタキセルを用いてreplacementを評価し、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の目標としては、in vivo における検討でマウス胎盤における酸化ストレスが妊娠・胎仔・胎盤に与える影響、および遺伝子発現の網羅的解析を行っていく。これまでの先行研究(Nat Nanotechnol. 2011;6;321)をもとに投与するナノマテリアルの種類、サイズ、量の至適化を行う。妊娠マウスに投与し、胎盤形成の程度をコントロールマウスと比較する。また妊娠マウスにおける胎盤内の組織内酸素分圧を、測定することで、胎盤内の低酸素の程度を評価するなど検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に薬品等物品費が増加する為、初年度の経費を抑えた。 繰り越す金額は実験器具・薬品等の物品費に充当。
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