研究課題/領域番号 |
25462557
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 仁美 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80467571)
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研究分担者 |
筒井 建紀 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00294075)
田畑 泰彦 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (50211371)
木村 正 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90240845)
熊澤 惠一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90444546)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生殖医学 |
研究概要 |
小児および若年期にがんに罹患した患者の生存率は大きく向上した。その一方で、癌治療による性腺機能への不可逆的な影響が問題となっている。彼らのQOLの向上のために妊孕性温存の選択肢について検討するべきとの考え方が浸透しつつある。 特に初経前の小児期女児における妊孕性温存の選択肢としては癌治療前に卵巣組織の一部を凍結保存する方法が唯一の方法である。凍結融解卵巣移植では、成熟卵子を得るまでに至らず、いまだ生児獲得は世界で23例のみの報告である。移植卵巣への血流改善・血管新生によって、組織生着および卵胞発育が促進され、成熟卵の効率的獲得が可能となると考え、近年の再生治療において臨床応用されている徐放剤による血管新生効果に注目した。本研究では、凍結卵巣移植のための徐放剤の導入・至適化について、マウスモデルにおける基礎的条件検討を目的とした。 具体的には、マウス卵巣をマウスに移植する系において検討を行い、これにより徐放剤の至適化を一旦施行し、その後ヒト卵巣を免疫不全マウスに移植を行う系において徐放剤の至適化を改めて施行する。今年度は、マウス卵巣組織をガラス化法で凍結保存し、これを融解し、マウスに移植をした。卵巣組織片は凍結前後に組織の状態の評価としては、ニュートラルレッドを用いた超生体染色およびHE染色による評価を施行する事とし、これら方法を確立した。ヒト卵巣組織については緩慢凍結法で凍結保存をする事とし、凍結前後にマウス卵巣組織片と同様の方法で組織の評価を施行した。 ヒト卵巣組織の提供について学内の倫理委員会に改めて申請を施行し、この承認を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年、日本生殖医学会より社会的適応による未受精卵の卵子凍結による妊孕性温存に関するガイドラインが発表された事により、一般社会における妊孕性温存に関する認知度および関心度が高まった。一方で、各学会から医学的適応による妊孕性温存に関して、「妊孕性温存について考慮するべき」との会告がされているものの具体的な方針が示されているわけではない。本研究計画では、本基礎研究を基盤として、H28年度以降に臨床研究をめざすため、技術的な問題点だけでなく、臨床研究の開始までに、倫理的な問題点も議論する必要性が明らかとなった。そこで、別の公的競争的資金を獲得し、妊孕性温存に係る倫理についての検討を本研究と並行して施行している。
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今後の研究の推進方策 |
in-vitroの系において、徐放剤の検討を施行し、至適化を施行した。これを、実際にマウス卵巣をマウスに移植する系において検討を継続して行う。移植した卵巣組織片の評価は、ニュートラルレッドを用いた超生体染色およびHE染色にて検索を行う。移植卵巣組織片の血管新生の評価として、組織学的評価、移植卵巣片における卵胞発育の評価を、組織学的な評価に加え、血中Anti-Müllerian hormone (AMH)値、超音波下におけるリアルタイムの卵胞発育の評価を施行する。最終的な評価方法として、実際に移植卵巣組織片より採卵し、体外で成熟培養したものを授精させ、胚の発生状態を評価する。さらに精管結紮したオスマウスと交配させた偽妊娠マウスに対して得られた胚の移植を行い、妊娠と妊娠経過について検討を行う。これにより、マウス卵巣を用いたin-vivoの実験系における徐放剤の至適化を施行する。今年度はこれに加え、ヒト卵巣組織片を免疫不全マウスに移植する系においても検討を行う。評価方法としては、マウス卵巣組織を用いる系と同様に施行するが、移植卵巣片から採取した卵子の成熟段階を評価するまでとし、授精はさせない。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究は予定通り進み、残額は研究をより発展させるため、来年度予算と合算して試薬購入等をするため。 試薬を購入予定。
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