研究課題
【目的】卵胞数の減少や卵の質の低下に起因する卵巣の加齢は、不妊領域最大の課題であるが有効な対処法はない。我々は松果体ホルモンのメラトニンが卵胞液中に存在し、その抗酸化作用で卵子を保護していることを報告してきた。今回はメラトニンの長期投与で卵巣の加齢を予防できるかどうかを検討した。【方法】10週齢雌ICRマウスをメラトニン投与群(M群)とコントロール群(C群)の2群に分け、43週までメラトニン水(100μg/ml)または水を飲水させ飼育した。PMSG-HCGによる過排卵刺激を行い、以下の実験を行なった。①卵管内の卵子を回収し排卵数を計測。②体外受精を施行し、分割卵数、胚盤胞数を計測。③卵巣組織の連続切片を作成し卵胞数を計測。④卵巣のトランスクリプトームをマイクロアレイ法にて解析した。【結果】①排卵数(個)は、C群7.6±2.6に比較して、M群11.1±5.1で有意に多かった。②体外受精の受精率、胚盤胞到達率は、いずれもC群に比較して、M群で高値であった。③卵巣組織の原始および一卵胞数はC群145±36に対し、M群198±29で高値を示した。④加齢に伴い発現が低下し、かつメラトニン投与でその低下が阻止される遺伝子は78遺伝子あり、うち40遺伝子がリボゾーム関連遺伝子であった。pathway 解析では抗酸化機構が抽出された。【結論】メラトニンの長期投与によって、加齢に伴う卵胞数、排卵数の減少、受精および胚発育の低下が防止できた。メラトニンの投与によって卵巣の加齢を軽減できる可能性があり、その機序はリボゾーム機能維持や抗酸化機構の賦活が関与している可能性がある。
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J Reprod Dev.
巻: 61 ページ: 35-41
10.1262/jrd.2014-105.