メチロームはトランスクリプトームより各々の細胞の特質をより鋭敏に表す。このようなメチロームの性質を利用し、子宮内膜症の由来を探ることを試みた。卵巣チョコレート嚢腫から分離した子宮内膜症由来の間質細胞 (choESC)、卵巣チョコレート嚢腫組織(CHO)、正常腹膜組織(P)、腹膜の子宮内膜症病変組織(EP)、正所性子宮内膜組織 (EM)、正常卵巣皮質組織 (OVA)を得て、HumanMethylation27/450を用い、ゲノムワイドDNAメチル化プロファイルを得た。次にGene Expression Omnibusよりヒト正常組織のゲノムワイドDNAメチル化データを得た後、データを統合し、クラスタ解析を実行した。ゲノムワイドDNAメチル化プロファイルクラスタ解析では、choESCとCHOはEMではなく、OVAに近い特徴を有することが判明した。EPもEMではなく、Pに特徴が類似していた。転写因子SF1は性ステロイドホルモン産生に重要な役割をもち、子宮内膜症組織では非常に高発現である。そしてSF1遺伝子 (NR5A1)はプロモーター領域のDNAメチル化によって発現制御されている。NR5A1プロモーター領域のDNAメチル化状態は、OVAとCHOでは低メチル化、EMでは高メチル化であった。以上の成績は、卵巣チョコレート嚢腫は卵巣由来の細胞で、腹膜病変は腹膜由来の細胞で構成されている可能性を示唆している。
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