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2013 年度 実施状況報告書

てんかん症例のバルプロン酸誘導多嚢胞性卵巣症候群のエピジェネティクス研究

研究課題

研究課題/領域番号 25462568
研究機関札幌医科大学

研究代表者

遠藤 俊明  札幌医科大学, 医学部, 准教授 (90213595)

研究分担者 鈴木 拓  札幌医科大学, 医学部, 教授 (20381254)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワードPCOS / androgen / valproic acid / epilepsy / insulin resistance
研究概要

1)本研究では妊娠SD系ラットにdehydroepiandrosterone(DHEA)を投与し、生まれて来た雌ラットのラットの性周期、卵巣の遺伝子発現の変化を検討した。性周期の乱れが確認された。摘出した卵巣をマイクロアレイで網羅的にmRNAの発現を検討し、DHEA非投与ラットから生まれた雌ラットの卵巣をコントロールと比較した。DHEA投与ラットでは、著明な増加が認められたのは、vascular endothelial growth factor(VEGF)B、claudin-12などである。VEGFBは心臓や骨格筋への脂肪酸の取り込み、脂肪蓄積と関連していることが報告されている。胎児期にアンドロゲンに曝露された雌ラットは、生後卵巣局所の脂質代謝に異常が起こっていることが示唆された。
2)VPA投与によるてんかん症例では、PCOS様賞状が報告されているため、29症例のPCOSについて、BMI、内分泌学的検査(下垂体ホルモン、性ステロイド、抗ミューラー管ホルモン(AMH))、インスリン抵抗性関連因子を検討した。またVPAを離脱できた症例のホルモン値の変化を追跡した。PCOSの診断基準の一つである高アンドロゲンを満たした症例は85%に及んだ。高アンドロゲン症例では、全例がandrostenedioneが高値を示し、一方free Teststerone高値は14%と低頻度だった。また、多嚢胞に一致して高AMHも認められた。さらに60%の症例にインスリン抵抗性がみとめられた。また、VPAを中止できた症例では、月経周期改善、LHやandrostenedioneの低下、インスリン抵抗性の改善が認められた。今回の結果、またVPA減量によりホルモン値、月経周期が改善した症例もあり、VPAが二次的なPCOS発症の原因であることが示唆された

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

妊娠ラットにアンドロゲンを投与し、PCOSモデルを作成し、卵巣中の分子発現の変化を検討したところ、vascular endothelial growth factor B(VEGFB)とclaudin-12の発現が有意に増加していることを見出したのは、今後のエピジェネティクス研究につながる。
また、てんかん症例に、小児期からバルプロ酸を投与したときに、思春期以降に2次性PCOSを発症することを国内では例が無いほど多数例で検証し、またバルプロ酸服用中止することにより、症状の軽減があることを見出したのは、臨床上極めて有用な発見であり、今後の研究の発展につながると考えられれる。

今後の研究の推進方策

妊娠ラットにアンドロゲンを投与して作成したPCOSモデルでVEGFBとclaudin-12発現の増加がみとめられたが、今後卵巣における発現細胞を免疫染色で確認する。またその2つの分子の卵巣における機能の解析をおこなう。
小児期からバルプロ酸を投与された症例と成人になってからバルプロ酸を投与された症例における、表現型の違いを検討する。またバルプロ酸を休止し得た症例における、内分泌学的変化を長期フォローし、予後を検討する。また通常のPCOSとの違いを明らかにする。

次年度の研究費の使用計画

1)アンドロゲン投与妊娠ラットから生まれた雌ラットの卵巣に有意な分子発現の増加がみとめられたため、それに関与するepigenticsの観点から研究する必要がある。
2)バルプロ酸を投与されたてんかん症例の、内分泌学的特徴を明らかにする必要がある。
3)幼若ラットにバルプロ酸を投与し、2)の状態を再現し、そのメカニズムを検討する計画である。
平成25年度残額が1,327,813円となったのは、下記の研究計画を平成26年度に、一気に完遂するために、研究費を残した。平成26年度に実施予定の使用計画は、1)dehydroepiandrosteroneを妊娠SD系ラットに投与し、生まれた雌ラットが性成熟期に達した時に卵巣を採取し、各種分子発現をreal time PCRで検討し、免疫染色でその発現部位を特定する。また、epigeneticsな変化をメチル化の有無から検討する。2)幼児期からバルプロ酸を投与されたてんかん症例が思春期以降のPCOS的になっているかを、内分泌学的またMRI検査で卵巣形態をチェックする。3)幼若ラットにバルプロ酸を投与し、卵巣のPCO化を検討し、各種分子発現の変化や、epigeneticsな変化をメチル化の観点から検討する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Failure of GnRH agonist-triggered oocyte maturation: its cause and management2013

    • 著者名/発表者名
      Asada Y, Ito F, Honnma H, Takiguchi S, Fukunaga N, Hashiba Y, Baba T, Endo T.
    • 雑誌名

      J Assist Reprod Genet

      巻: 30 ページ: 581-585

    • DOI

      10.1007/s10815-013-9966-4

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Assisted reproductive technique increases the risk of placental polyp.2013

    • 著者名/発表者名
      Baba T, Endo T, Ikeda K, Shimizu A, Morishita M, Kuno Y, Honnma H, Kiya T, Ishioka S, Saito T.
    • 雑誌名

      Gynecol Endocrinol

      巻: 29 ページ: 611-614

    • DOI

      10.3109/09513590.2013.788636

    • 査読あり
  • [学会発表] バルプロン酸投与てんかん症例に発症した2次性多嚢胞性卵巣症候群の特徴について2013

    • 著者名/発表者名
      久野芳佳、遠藤俊明、清水亜由美、森下美幸、池田桂子、馬場剛、斎藤豪
    • 学会等名
      日本産科婦人科学会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      20130510-20130512

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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