研究課題
抗精子抗体(ASA)は、時に男性/女性双方に検出される。これらの抗体群は生殖過程において様々な免疫学的作用を有し、これらが単独・複合的影響を及ぼし免疫学的不妊が成立する場合があると思われる。これら免疫学的不妊機序の複雑さはASAが認識する分子の多様性を示唆するが、それぞれの抗原エピトープの性状、生殖過程における生理活性の多くは未だ不明である。これら未知抗原の機能不全を基盤とする病態が、現在「原因不明」不妊症として分類されている場合もあると推定される。従って、これら分子の構造機能連関の研究は不妊症の病態解明上で極めて重要である。本研究においてASA、特に男性に認められる自然抗体として検出される抗体の機能解析モデルとして、マウス精巣上体成熟精子頭部の反応性を指標にASAを解析したところ、Ts4と命名した単クローン抗体は以下のような特性を持つことが明らかとなった:1) 体外受精阻害活性を示す; 2)生体内の対応抗原は雄性生殖細胞及び初期胚に限局する; 3)抗原分布は限局するが、雄性生殖細胞では複数の糖タンパク質と反応する; 4)それらのタンパク質のうちTs4反応性を持つものとして同定されたのはTEX101およびα-N-アセチルグルコサミニダーゼである;5)対応抗原はN-結合型糖鎖で、その決定基の構造はバイセクト型GlcNAc糖鎖を持つ構造(agalacto-biantennary N-glycan with bisecting GlcNAc with fucose residue)を有する。バイセクト型GlcNAc糖鎖は細胞の接着・浸潤などの基本的生理機能、さらにはがん細胞における転移等にも深く関連するとされている。Ts4の認識する糖鎖は生体内に極めて限局して分布し、またこの抗体は受精阻止活性を持つことからも、生殖過程におけるこの糖鎖構造の重要性が本研究により強く示唆される。
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