研究課題/領域番号 |
25462582
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研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
三浦 巧 独立行政法人国立成育医療研究センター, 生殖・細胞医療研究部, 研究員 (60405355)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | iPS細胞 / ES細胞 / リプログラミング / 初期化 |
研究概要 |
近年の国内外の報告により、ヒトとマウスのiPS細胞は、その性質が大きく異なることが解ってきた。具体的には、マウスiPS細胞の方がヒトiPS細胞より初期(ナイーブな)状態に近く、ヒトiPS細胞はマウスiPS細胞と比較して不完全なリプログラミング状態にある。本研究課題では、ヒトiPS細胞をより初期状態にもちこむことで、ヒトiPS細胞の高品質化を図ることを目的として研究を進める予定である。本目的達成のために、平成25年度は、プライム型ヒトiPS細胞をナイーブ状態へと初期化させる誘導法について検討を行った。既報の論文より、プライム型ヒトiPS細胞をナイーブ状態へ誘導するには、PD/CH/LIFの存在が必要である。しかしながら、その誘導効率は極めて低いため、PD/CH/LIF以外のリプログラミング促進化合物(フォルスコリン、p53阻害剤など)を相加的にプライム型ヒトiPS細胞へ作用させ、ナイーブ化を試みた。その結果、マウスES細胞様の形態を示すコロニーの出現は認められたが、単離後維持できないことが判明した。次に、ドキシサイクリン(Dox)誘導型のプロモーターで制御されたリプログラミング因子を体細胞へ導入し、体細胞のナイーブ化を試みた結果、Doxを添加した場合において、PD/CH/LIFを含む培養環境下でマウスES細胞様のコロニーが出現し、長期間培養可能であることが明らかとなった。以上の結果は、PD/CH/LIFを含む培養環境下でナイーブ化を実現するには、少なくともリプログラミング因子の強制的な発現が要求されることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、「プライム型ヒトiPS細胞をナイーブ状態へと初期化させる誘導法の確立」を主な研究計画として掲げ、本計画をすべて遂行することができ、ナイーブ型ヒトiPS細胞を樹立するためには、培養環境だけでなく細胞内のリプログラミング因子の量的バランスも検討する必要があることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、ナイーブ型ヒトiPS細胞を樹立するためには、培養環境だけでなく細胞内のリプログラミング因子の量的バランスも関与していることを明らかにしてきた。以上の研究成果をさらに発展させる目的で、今後は細胞内におけるリプログラミング因子の誘導に寄与するシグナル伝達経路について検討を行い、並行してそれに関わる細胞外因子の同定も行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
調達方法の工夫などにより、当初計画より経費の節約ができたため。 本年度は当初の予定通りに研究が進み、ナイーブ型ヒトiPS細胞を樹立するためには、培養環境だけでなく細胞内のリプログラミング因子の量的バランスも関与していることを明らかにすることができた。以上の研究成果をさらに発展させるために、次年度は当初の予定に加えて、細胞内におけるリプログラミング因子の誘導に寄与するシグナル伝達経路について検討を行い、並行してそれに関わる細胞外因子の同定も行う予定である。そのため、当該助成金は、上述に関わる物品費分に割り当てられる予定である。
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