研究実績の概要 |
Ib期以上の子宮頸癌260例に対してクリニチップHPVタイピングキットを用いてHPVタイピング検査を行いHPV16陽性患者(N=124)・HPV18陽性患者(N=55)・HPV16/18陰性患者(N=81)の3群に分類してHPV型別の病態解析を行った。Ⅱ期以上の症例における5年無増悪生存率(5y-PFS)を解析すると、組織型で統計補正してもHPV16陽性患者ではそれ以外の群と比較して有意に予後良好であった(5y-PFS: 75.8% vs. 49.6%, P=0.001)この成果は第67回日本産科婦人科学会学術集会シンポジウムにて発表し、現在論文作成中である。
日本人女性1253例(健常人女性341例・CIN1患者505例・CIN2-3患者96例・頸癌症例311例)のHLAデータを解析した。DRB1*1302のアリル頻度は、健常人(11.7%)とCIN1患者(11.9%)では全く差が見られなかったが、CIN2-3患者 (5.2%) や頸癌患者(5.8%)では有意に低かった。LSIL患者のコホート研究においても、DRB1*1302アリル陽性者ではCIN3への進展は一例も見られず、DRB1*1302アリルがCIN3への進展リスクを有意に減少させるアリルであることを世界で初めて前方視的に示した(P=0.03)。この成果は英文論文として報告した (Matsumoto K et al. Cancer Science, 2015; 206: 1448-55) 。
高度前癌病変CIN2/3治療後のHPV検査の有用性について、1996~2013年までに報告された論文33編からデータ (n=5319) を使用してメタ解析を行った。治療後のCIN2/3の残存・再発の検出感度は、ハイリスクHPV検査 (0.92, 95%信頼区間0.90-0.94) は従来の細胞診 (0.76, 95%信頼区間 0.71-0.80) よりもはるかに高かった。特異度はハイリスクHPV検査 (0.83, 95%信頼区間0.82-0.94)と細胞診 (0.85, 95%信頼区間0.84-0.87)とほぼ同等であった。これらの結果から、CIN2/3治療後のフォローアップにHPV検査を取り入れることの有用性を報告した。その成果は英文論文として報告した (Onuki M, Matsumoto K, et al. J Gynecol Oncol 2016; 27; e3)。
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