研究課題
平成25年度はマウスにおけるin vivoでの検討を行う予定であったので、ヌードマウスに卵巣癌細胞株SKOV3ip1を移植し、血管新生阻害剤ベバシツマブ投与群とプラセボ群に分け、実験を行った。投与期間中は腫瘍体積を計測し、最終的には腫瘍組織を摘出して免疫染色を行った。その結果、ベバシツマブ投与群では、プラセボ群と比較して有意な腫瘍体積縮小がみられた。また摘出した腫瘍の薄切を用いて、低酸素マーカーであるpimonidazoleに対する免疫染色を行った結果、腫瘍体積は縮小していたのにも関わらず、ベバシツマブ投与群において腫瘍内部に低酸素領域が形成されていることが確認できた。また、卵巣癌幹細胞マーカーとして知られているCD133についても免疫染色を行った結果、腫瘍内部の低酸素領域近傍に発現がみられた。卵巣癌細胞株SKOV3ip1を用いたin vitroでのReal-time PCRの実験により、低酸素環境下でCD133の発現が亢進していることも確認した。これらのことより、ベバシツマブ投与により腫瘍内部に形成される低酸素環境において、治療抵抗性の一因として考えられている癌幹細胞が出現、維持されている可能性が示された。一方、ベバシツマブとシスプラチンとの併用効果を検討する前に行ったシスプラチン単独投与群では腫瘍体積における縮小効果は得られなかった。今後、シスプラチン濃度、投与頻度の最適化を検討して、再度ベバシツマブ、シスプラチン併用効果を検討したい。また96検体からなる卵巣癌tissue micro array(TMA)を作製し、HIF-1alphaに対する免疫染色を行うため染色条件等を検討中である。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度において、マウスを用いてベバシツマブ投与による腫瘍内低酸素領域形成の観察については計画していた内容をほぼ進めることができた。一方、ベバシツマブとシスプラチン、HIF阻害剤との併用効果については一部進めることができたが、最終的な結果がまだ得られていないため、次年度、シスプラチン、HIF阻害剤の最適な濃度、投与頻度等を検討して、引き続き研究を行っていきたい。
平成26年度以降は、概要にも述べたように再度ベバシツマブ、シスプラチン併用効果を検討したい。また、計画書にあるようにHIF抗体等を用いて、卵巣癌tissue micro array(TMA)の免疫染色を進め、臨床プロファイルとの関連性を検討していきたい。
購入予定していた消耗品の数が少なく済んだため。免疫染色を行う予定なので、抗体、試薬等を中心に、消耗品等も購入予定である。
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