研究課題/領域番号 |
25462600
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
山口 直人 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (40239900)
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研究分担者 |
JESMIN Subrina 筑波大学, 医学医療系, 助教 (60374261)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エストロゲン受容体 / 糖尿病 / VEGF / 閉経 / 微小循環異常 |
研究概要 |
雌マウスの野生型(WT)、エストロゲンα受容体ノックアウトマウス(ERαKO)およびエストロゲンβ受容体ノックアウトマウス(ERβKO)を飼育、繁殖させた。8 週齢の時点でストレプトゾトシン(STZ,150 mg/kg,ip/日) 2回投与し、以下の6群を作成。その5週間後、ペントバルビタール麻酔下で心臓超音波検査(UCG)、血圧測定を行い、安楽死後に直ちに血液(血清・血漿)を採取し、臓器(心臓、腎臓、脳)を摘出した。 1. 野生型 (WT, n=25) 2. ストレプトゾトシン(STZ)投与マウス (WT+STZ, n=23) 3. エストロゲンα受容体ノックアウトマウス(ERαKO, n=22) 4. ERαKO+STZ 投与マウス (ERαKO+STZ, n=22) 5. エストロゲンβ受容体ノックアウトマウス(ERβKO, n=22) 6. ERβKO+STZ 投与マウス (ERβKO+STZ, n=22) 結果:(1)体重と血糖値: STZ 投与群のマウスの体重は何れも減少したが、特にERαKO群で高度であった。 STZ投与による高血糖の程度もKOマウス群の方が高度であった。 (2)心臓超音波検査: 野生型マウスでの比較としては、非糖尿病群と比べ、糖尿病心では心機能低下(拡張・収縮不全)がみられた。ノックアウトマウス群では、ERαKO、ERβKO 両者ともに心機能低下(軽度)を認めた。糖尿病群における心機能低下の増悪はERαKO では明らかであったが、ERβKO では認められなかった。 (3)心臓組織 VEGF発現 レベル: 野生型マウス群とKOマウス群の両群において、高血糖発症群では、組織VEGF 発現レベルは低下を認めた。KOマウス群の低下は野生型よりも高度な低下を示した。ERβKO群におけるSTZ投与においては、組織VEGF低下の増悪は有意ではなかったが、ERαKOマウス群においては、STZ投与群における心組織VEGFは、一層の低下を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
途中である。以下のデータを解析中。 即ち、心臓組織の可溶性VEGF 受容体 (sVEGFR1 および sVEGFR2)発現レベルを測定中。 野生群に比べて高血糖群では、心組織のsVEGFR1発現は高いレベルの印象である。この亢進はERαKOマウス群において高度な印象である。心組織のsVEGFR2発現も同様で、ERαKOマウス群において高度な傾向である。即ち、2種類の可溶性受容体(sVEGFR1,sVEGFR2)は、VEGF発現の低下とは逆に、亢進を示し、かつそのレベルにおいてはERβKOよりもERαKOにおいて、高度な傾向が認められている。以上の程度(高度や相関の状態など)を統計的に解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
心組織の血管新生系であるVEGFシグナル伝達系における組織リン酸化レベル(peNOS)を解析する。リン酸化eNOSは、eNOSの活性化状態をあらわすと考えられるが、そもそもeNOSは、VEGFシグナル伝達系の下流に存在する重要な分子と考えられる。高血糖マウスの心組織における、リン酸化eNOS(peNOS)濃度を測定する。このpeNOS 濃度は、ERαKOとERβKOで違いがあるか否かを解析する。ERαKO及びERβKOの両群を対象として、非糖尿病群とSTZ投与群でのpeNOS発現の相違を調べる。KOされている選択的エストロゲン受容体の違いによって、糖尿病環境における、peNOS発現の相違があるか否かを解析する。 初年度はストレプトゾトシン誘発性1型糖尿病モデルの解析を開始したが、2年次以降では、高脂肪食誘発性の1型糖尿病モデルの作成、解析を、同様に行いたい。即ち、普通食モデルとの比較において、心機能、心組織発現VEGF及び受容体の発現とそのバランス、eNOS発現等を、ERαKO及びERβKOの2群を対象として比較する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進捗状況はほぼ計画通りで達成度もおおむね順調である。ただし、一部の実験動物群において、平成25年度計画における最終段階である臓器検体処理と生化学的測定に数か月レベルでの遅れが生じた。即ち、前項、H25年度の研究実施計画にあるごとく、遺伝子欠損マウスの準備、糖尿病の誘発、手術処置、心機能評価等までは順調であるが、一部の実験群においては最終段階である生化学的指標の測定に至らなかった。一部の最終段階ではあるが、一部であるため準備・実施等は非効率であり、研究費としては大きい部分を占める。この最終段階における消耗品購入・人件費支払執行等が次年度にずれ込んだため、次年度使用額が生じました。 1. 生化学的測定検査試薬:ELISAキット(インシュリン、hsCRP,VEGF,VEGF受容体等)、一般生化学的測定試薬(血糖、HDL,LDL等)の購入、RNA測定試薬、文具等として642,036円。2.以上の測定作業担当研究補助者への人件費(内訳:5人x2か月)・1月30千円として300,000円。以上の1と2の合計として942,036円。
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