研究実績の概要 |
研究3年目最終年度(H27年度)では、平成26年度に作成を開始した2型糖尿病マウスモデルを用いて、VEGF系とエストロゲン受容体系との関係の解析を計画した。ただし、残念ながらエストロゲンα受容体の系の継続が3年目途中で困難となったため、解析に十分数を確保できず、このたびの研究期間内では、選択的エストロゲンβ受容体ノックアウトマウス系での解析を行った。 通常脂肪食(12%脂肪、28%タンパク、60%炭水化物;A04,Villemoisson sur Orge, France)と高脂肪食(72%脂肪:コーン油、ラード、28%タンパク、1%未満炭水化物)の2群を作成して以下の比較を行った。 (1)体重変化:高脂肪食群は通常脂肪食群よりも有意な体重増加を示した。(2)血糖値:高脂肪食群と通常群の2群に有意差を認めなかった。(3)心臓組織でのVEGF(血管内皮増殖因子)発現:通常食群(n=5, 52±8pg/mg)と高脂肪食群(n=5, 62±12pg/mg)であり、高脂肪食群ではVEGF発現は多い傾向がみられたが有意差は認めなかった。(4)心臓組織でのリン酸化Akt発現とリン酸化eNOS発現:通常食と高脂肪食群の2群において、リン酸化Akt発現とリン酸化eNOS発現は同程度であった。 以上より、心臓でのVEGF血管新生系のシグナル伝達系においては、雌エストロゲンβ受容体系では、通常食でも高脂肪食でも有意な変化は認められなかった。エストロゲンα受容体ノックアウトマウスの系の継続は平成28年4月現在、再度、試みている。残念ながら今回の3年計画では間に合わなかったが、平成28年度中には回復・継続して、対象個体数を確保する予定である。
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