研究課題/領域番号 |
25462603
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
春田 祥治 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30448766)
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研究分担者 |
大井 豪一 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (10283368)
伊東 史学 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (20553241)
小林 浩 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40178330)
川口 龍二 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (50382289)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 大豆ビクニン / がん転移抑制薬 / 分子標的薬 / 低分子薬 / 卵巣癌 |
研究概要 |
我々は、ヒト羊水・尿から国際的にビクニンと命名されたがん転移抑制物質を発見した。一方でビクニンは、我々の研究により本来羊水中において上記シグナル伝達の阻害を介して抗炎症活性を発揮し感染に起因する早産を制御する生理的物質としても認識されており、早産予防の治療薬として、広く活用されている。我々は、本邦ですでに商品として販売されている、ヒト尿から精製したビクニンであるウリナスタチンを、臨床研究で進行卵巣がん患者に対して経静脈投与することにより、有意に優れた5年生存率を得ることができた。しかも抗がん剤や従来の分子標的治療薬にみられる副作用は全く認めなかった。しかしながら、臨床上ビクニンの最大の欠点は、分子量4万の糖蛋白であるため静脈内投与しなければならないことであった。次に我々は、ビクニン作用を模倣する天然成分の探索を行い、大豆蛋白を精製する際の廃棄物中に大豆ビクニンが豊富に含まれることを発見した。そしてマウスを用いた研究で、大豆ビクニンは内服可能であることを確認した。本研究では、予後不良な進行卵巣がん患者の予後改善のみならず、服薬コンプライアンスや患者QOLの向上をめざし、内服可能なビクニン低分子化合物の開発実現のために、抗腫瘍効果をもたらす大豆ビクニンの生物活性の基礎的評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大豆蛋白を精製するときに廃棄されていた大豆灰抽出物成分(大豆ホエー)にビクニンが含まれており、粗抽出物から生化学的手法(イオン交換および分子ふるい)によって、今回の基礎実験及び動物実験の目的のために大豆ビクニンを精製し研究に臨んだ。ヒト卵巣癌培養細胞HRAに精製大豆ビクニン(2μM)を添加したときの細胞内シグナル蛋白(Src, MEK, ERK, JNK, p38, PI3K, Akt)のリン酸化をウエスタンブロットで測定した。その結果、大豆ビクニンによるシグナル伝達抑制作用について、Srcシグナルの上流を制御してTGF-beta刺激を阻止しMAPK(ERK1/2)、PI3K/Aktの活性を抑制し、結果としてuPA産生を止めることによりがん細胞の浸潤を抑制することが判明した。また、精製大豆ビクニンを添加したHRAと精製大豆ビクニン遺伝子を導入したHRAを用いて、cDNAマイクロアレイ実験を試行したところ、多くの遺伝子(30~40個)が変化していることが判明した。代表的な候補遺伝子としてウロキナーゼ・ウロキナーゼ受容体・マトリプターゼ・PAPP-A (pregnancy-associated plasma protein-A)・PI3K p85.などがビクニンの下流に存在していた。
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今後の研究の推進方策 |
担癌マウスを用いて、大豆ビクニン皮下注射による癌転移抑制の実証実験、大豆ビクニンと抗がん剤の組み合わせによる癌転移抑制効果および抗癌作用の検討、大豆ビクニン内服による癌転移抑制効果の確認および大豆ビクニン内服と抗癌剤併用による癌転移抑制効果の検討を行う予定である。その後、コンピュータ分子シミュレーションを駆使し、内服可能な大豆ビクニン活性を模倣する低分子薬の開発に向けた低分子化合物の探索、設計・試作行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入を計画していた、解析および画像処理用パーソナルコンピューターを購入せず、既存の機器を使用していた。 試薬等の使用状況については、ほぼ予定通りであった。 解析および画像処理を円滑に行える様に、当初予定していたパーソナルコンピューターを購入予定である。
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