研究課題
【目的】 子宮体癌は発癌過程においてエピジェネティックな変化が高頻度に生じていることが知られている。そこで、子宮体癌に対する新たな核酸医薬の構築を目的として子宮体癌においてエピジェネティックに制御されている癌抑制型microRNA(miRNA)を同定し、その抗腫瘍効果をin vitro およびin vivoで検討した。【方法】 4種のヒト子宮体癌細胞(SNG-II、HEC-1B、Ishikawa、HHUA)を用いて脱メチル化剤である5-aza処理前後のmiRNA発現変化を、miRNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析した。さらに、体癌由来細胞株に対して候補となる癌抑制型miRNAを導入し、癌細胞に対する効果をコロニーフォーメーション、細胞遊走・浸潤能試験を用いて検討した。また、in vivoにおける抗腫瘍効果をヌードマウスに作成した腫瘍で検討した。【結果】 miRNAマイクロアレイ解析の結果、脱メチル化処理後に4種の子宮体癌細胞に共通して発現が上昇(fold change>1.5)していた、癌抑制型microRNAとしてmiR-34bを同定した。子宮体癌細胞株(HEC-108)にmiR-34bを導入したところ、コロニー形成能および遊走能が有意に低下し(p<0.05)、G1arrestの細胞割合が増加した。また、HEC-1Bをヌードマウスの皮下に移植し、移植の2週間後からパクリタキセル単独群、パクリタキセル+nega-miR群、パクリタキセル+miR-34b群の3群に分け各薬剤投与を行った。薬剤投与28日目にパクリタキセル+miR-34b群は他の群に比し有意に腫瘍径の縮小が認められた(P<0.05)。【結論】miR-34bは子宮体癌において異常メチル化により高頻度に発現が抑制されている癌抑制型miRNAで、体癌細胞の増殖・遊走に重要な役割を果たしていると推測された。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた本年度の研究計画を、ほぼ予定通りに行うことが出来た。当初、候補microRNAの解析には、ウィルスベクターを用いた恒常的な発現系を用いて行う予定であった。しかし、実際にmiR-34bをレンチウィルスベクターを用いて導入すると、導入後の細胞は殆ど増殖せず、その後の解析が困難であった。そのため、合成microRNAを用いた一過性の発現誘導による実験を行った。
今後は、この候補microRNAが子宮体癌の治療に結びつくか、単独での抗腫瘍効果の検討および、既存の抗癌剤との併用を検討する。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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