研究課題
多くのがんは多因子遺伝疾患であり、遺伝因子と環境因子の双方がその発症に関与していることが判明している。元来より子宮体癌は閉経前後での発症が高頻度で、肥満、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を背景を有する例が多いと考えられてきた。このことは子宮体癌が生活習慣病とがんとの関連を探るモデル疾患となりうることを意味する。一方で近年は若年発症の子宮体癌例も増加しており、従来から提唱されている疫学的特徴から逸脱するケースも多い。そこで本研究は子宮体癌発症に関わる遺伝因子と環境因子を統合的に解釈し、その分子病態を明らかにすると共に、ドラッグリポジショニングを含めた子宮体癌治療候補薬を同定を試みることで、最終的に子宮体癌発症例のQOL維持に貢献することを目的とした。平成25年度は婦人科疾患において両側卵巣卵管切除術(BSO)施行女性における血清脂質値の特性を中心に検討して公表した(Hirasawa A et al. Hypertriglyceridemia is frequent in endometrial cancer survivors. Jpn J Clin Oncol 2013; 43(11): 1087-1092)。BSO施行女性693名(うち子宮体癌412例)を対象として基礎疾患・閉経前BSO例ではBSOからの時期・閉経後BSO例では閉経からの時期・BMIと血清脂質値[総コレステロール(TC)、LDLコレステロール(LDL-C)、HDLコレステロール(HDL-C)、中性脂肪(TG)、LDL-C/ HDL-C比]を比較した。その結果、子宮体癌例では非子宮体癌例と比較して、BSO施行時期が閉経前後のいかんにかかわらず、TG値が有意に高く(Mann-Whitney U検定,P<0.0001)、高TG血症(TG≧150mg/dl)と診断された例が有意に高頻度であった(カイ2乗検定, P<0.05) 。その他の因子では閉経前BSO例・閉経後BSO例共に子宮体癌例では非子宮体癌例と比較して、BMI高値例が有意に多かった(Mann-Whitney U検定,P<0.05)。
2: おおむね順調に進展している
1年目は膨大な臨床データの解釈を中心に行い、その結果を公表することができた。
子宮体癌例における骨密度の特性、およびエストロゲン代謝関連遺伝子多型の関与について検討中である。さらに若年発症子宮体癌関連遺伝子の探索を行う予定である。
平成25年度は臨床データ解析が主であり、消耗品への充当が少なくなった。平成26年以降は成果発表のための国外旅費にも充当予定である。
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