研究課題
子宮内膜癌組織においては高分化型腺癌にスルファチドI3SO3-GalCerが発現し、低分化型腺癌には発現していない。高分化型の方が抗がん剤感受性であることからスルファチドは抗がん剤感受性の指標になると思われた。一方、組織型の異なる卵巣癌においては、粘液性に例外なく発現していて、その濃度は高分化型内膜癌の5倍以上の高濃度であった。漿液性と類内膜卵巣癌においては約60%の患者に検出でき、その濃度は高分化型内膜癌に匹敵していた。卵巣癌の場合、粘液性型の患者は抗がん剤耐性であることから、スルファチドの発現は抗がん剤耐か感受性かに関係していないと考えられた。糖脂質硫酸基転移酵素遺伝子をクローニングし、硫酸化糖脂質を含まない細胞に遺伝子導入を行って硫酸化糖脂質を発現させ、抗がん剤感受性を含む癌細胞の性質にどのような影響を与えるのかを直接解析した。硫酸基転移酵素遺伝子GSTを発現ベクターpCDNA3.1に組み込み、SNG-IIに導入した。遺伝子導入によって得られたSNG-II-GST細胞とSNG-II細胞を比較すると、SNG-II-GSTにはII3SO3-LacCer、II3SO3-Gg3Cerが高濃度に含まれ、代謝的に接続するGM3、LacCer濃度が低下していて、遺伝子導入による代謝変化が観察できた。SNG-IIは敷石状に増殖するのに対し、SNG-II-GSTはドーム構造を形成し、ヌードマウス皮下に移植すると腺構造を形成した。SNG-II-GSTの倍加時間はSNG-IIの約半分に低下し、高分化型形質を示した。抗がん剤パクリタキセルに対しては、SNG-IIに比べSNG-II-GSTの方が耐性を示した。SNG-II-GSTの硫酸化糖脂質の濃度は粘液性卵巣癌に類似していることから、硫酸化糖脂質と抗がん剤感受性には閾値がある可能性がある。
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