研究課題
卵巣癌は卵巣が腹腔内に存在することから早期発見が難しく、ステージ進行時に初診受診される例も少なくない。このような背景から卵巣癌発癌メカニズムを解明し、早期発見を目的とした臨床応用可能とする研究成果が望まれている。そこで本研究では、培養条件下にて構築した子宮内膜症モデルと卵巣癌患者の臨床検体の双方から卵巣癌発癌機構の解明を行い、個別化治療法の確立へと応用することを目的としている。平成25年度の研究実施計画は、細胞培養条件下にて子宮内膜症組織の構築を三次元培養法により確立することであった。そこで三次元培養組織の最上層部位に重層する上皮部分を構築するため、患者由来上皮性癌細胞株を樹立することとした。樹立に必要な患者由来細胞は当院受診の卵巣癌患者症例を対象とした。研究対象患者の腹水を手術時に採取したところ、採取者のうち9名に癌細胞が確認され株化細胞樹立を試みた。その結果、1検体が培養細胞として株化可能な状態となっており、現在経過を観察中である。さらに平成25年度では、平成26年度に実施計画を予定していた臨床検体を使用した子宮内膜症からの発癌メカニズムの解析について、その予備検討実験を行い卵巣癌症例の手術時摘出検体の卵管・卵管采および卵巣上皮細胞の蛋白発現や遺伝子の変異を解析した。その結果、卵管采の上皮細胞には細胞異型が無いにも関わらずp53蛋白の発現が確認され、陽性細胞には特定codonのTP53遺伝子の変異が検出された。文献的に卵管采の上皮細胞にp53の発現が検出されることは報告されているが、TP53遺伝子の限局codonに遺伝子変異が検出されることは報告されていない。そこで本実験内容を26年度から25年度に変更して実施して成果を報告した。なお、解析に使用した患者検体はすべて慶應義塾大学倫理委員会にて承認されており、研究目的に患者検体を使用することを同意された症例である。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度に実施計画予定とした内容は、本研究期間の通年にて行う内容である。その一部を平成25年度内に遂行可能とした。また、平成26年度に研究実施計画を予定していた計画内容を平成25年度内に実施し、有用な結果を得ることが出来た。以上の理由から本研究はおおむね順調に進展していると判定した。
平成26年度の推進方策は、25年度に得られた興味深い研究成果である卵巣癌発癌機序の要因となっている遺伝子の変化と蛋白の発現について引き続き継続して研究を行うこととする。平成25年度における本研究遂行過程において、本来の解析とは別の他の癌腫についてもその発癌機構を解明しつつある。そこで平成26年度内にさらに有用な結果を得られるよう研究を実施することとする。研究期間を継続して実施する予定である三次元培養の確立については、25年度に三次元培養の最上層部の上皮細胞を株化した。そこで平成26年度では下層部である間質部分の構築を培養細胞を使用した基礎実験を開始し、予備実験を同時に進行する予定とする。
平成25年度の研究実施計画は細胞培養細胞条件下にて子宮内膜症組織の構築を三次元培養法により確立する予定であった。しかし、平成26年度に実施予定とした臨床検体を使用した子宮内膜症からの発癌メカニズムの解析を平成25年度内にその予備実験として蛋白発現や遺伝子の変異を解析したところ、子宮内膜症以外の部位の上皮細胞より発癌過程に関与する蛋白発現の変化や特定遺伝子の変異が検出された。そこで本実験内容を26年度から25年度に変更して実施した。そのため、平成25年度に実施予定とした特殊培養に必要な試薬、消耗品等の経費を平成26年度に行う実験に必要な経費としたため次年度使用額が生じた。平成26年度の本研究遂行には平成25年度に実施予定であった特殊培養法の実験を26年度と入れ替えて行う予定であることから、今年度に消耗品等の経費を使用する。また、平成25年度に得られた成果を引き続き検証する実験にも使用予定である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (4件)
Jpn J Clin Oncol 44(1) 49-46 2014
巻: 44(1) ページ: 46-49
J Hum Genet
巻: 58 ページ: 794-798
10.1038/jhg
Int J Gynecol Pathol
巻: 32 ページ: 26-30
Jpn J Clin Oncol
巻: 43(11) ページ: 1087-1092
doi:10.1093/jjco/hyt125
巻: 43 ページ: 515-519
J Clin Oncol
巻: 31 ページ: 427-29