研究課題
近年の研究より、卵巣癌は卵巣本体より発生する単一の性質をもった疾患ではなく、組織型により発癌起源細胞や発癌機序が異なることが解明されている。主な上皮性腫瘍のうち、漿液性腺癌は卵管上皮の異型細胞が卵巣本体に移行して発症するとされ、類内膜および明細胞癌は卵巣に発生する子宮内膜症嚢胞病変に含まれる異所性子宮内膜症上皮細胞が起源であり、粘液性癌は消化管または子宮頸部の癌細胞が移行して発症するなど異なることが明らかとなった。卵巣癌は婦人科腫瘍の中でも比較的進行して発見される症例が多く予後や生存率が低い。その理由として卵巣は腹腔内に存在するため、体表面からの検診や細胞採取等が困難であり、検診には向かない臓器であることがあげられる。このような背景から卵巣癌早期発見を目指した臨床応用可能な技術の開発が望まれる。そこで本研究では、卵巣癌の発症機序について発癌起源細胞の特性を遺伝子および蛋白レベルで解析することで、患者負担が少なく卵巣癌の早期発見に有用な新規検査法の確立を目指すことを目的としている。今年度は卵巣癌の中でも最も発生頻度が高い漿液性癌に対し、卵管上皮細胞のp53蛋白発現とTP53遺伝子変異を非卵巣癌例、BRCA遺伝子変異保持者にてリスク低減両側卵管卵巣摘出術施行例(以下RRSO例)、BRCA遺伝子変異陽性で卵巣癌発症例の各症例における細胞形態学的に異型の無い卵管上皮細胞についてp53の特性を検討した。その結果、RRSO例および卵巣癌例の卵管上皮細胞には、細胞異型が無くともp53蛋白の高発現と特定部位のアミノ酸変化を伴うTP53遺伝子変異が検出され、当該遺伝子変異は同一症例の卵巣癌細胞でも検出された。本解析結果から、卵管上皮細胞には形態学的に異型はなくとも症例によって前癌病変に近い変化が起きていることが解明された。これより、卵巣癌早期発見には症例ごとに異なる個別のサーベーランスが必要であると考えられた。
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Prz Menopauzalny
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